フランス語のお菓子の名前が魅力的に感じられるのはなぜでしょう?
フランス語の響きの美しさには、スイーツが目と舌にもたらす心地良さに通じるものがあるのかもしれませんね。
今回はそんな「フランス語のお菓子の名前」の見かたをご紹介します。
フランス語のお菓子(ケーキ)の名前
○○・オ・~
お菓子の種類
「ガトー」「ショコラ」「ポワール」「オランジュ」などのフランス語は、日本でもかなり親しまれるようになりました。それぞれ次のような意味の名詞です。
- gâteau(ガトー) ケーキ
- chocolat(ショコラ) チョコレート
- poire(ポワール) 洋ナシ
- orange(オランジュ) オレンジ
ガトー・オ・ショコラ(または一息に発音してガトー・ショコラ)gâteau au chocolat=チョコレートのケーキ
タルト・オ・ポワール tarte aux poires=洋ナシのタルトなどはよく目にしますね。
フランス語は基本的に英語の chocolate cake や pear pie のように名詞を並べて複合名詞を作ることはなく「名詞+前置詞+名詞」のようにつなぎの前置詞を用います。
au・à la・aux
「○○・オ・~」は菓子の名前に多いパターンですが、「オ・~」には「~を添えた」「~を使った」、という意味があり、冒頭の gâteau・tarte の補語(意味を補足する語)を作っています。
最初の名詞が主体で「オ・~」はその説明というわけです。「○○・オ・~」には「○○・ア・ラ・~」というバリエーションもあります。
少し詳しくご説明すると「オ(au)」はその後ろに男性名詞、「ア・ラ (à la)」は女性名詞、同じ発音ですが綴りの異なる「オ(aux)」は男性または女性名詞の複数形が後に続く場合、というように使い分けます。
これらは文法上の違いで、意味は同じです。
baba au rhum
ババ・オ・ラム(ラム酒に浸したレーズンケーキ)
mousse à la pistache
ムース・ア・ラ・ピスタシュ(ピスタチオのムース)
croissant aux amandes
クロワッサン・オ・ザマンド(アーモンドクリームを詰めたクロワッサン)
- baba …洋酒に浸したレーズンケーキ
- rhum …ラム酒
- mousse …ムース
- pistache …ピスタチオ
- amande …アーモンド
いずれも最初の名詞が主体で、「オ・~」、「ア・ラ・~」がその説明です。
rhum は男性名詞、 pistache は女性名詞、 amandes は女性名詞の複数。対応の仕組みが分かりますか?
名詞と形容詞
今や定番の「クレーム・ブリュレ crème brûlée」は「焦がしたクリーム」の意味。カスタードクリームの上に砂糖をかけ、バーナーやオーブンで表面を焼いたお菓子です。
パンケーキに続いて次なるブーム到来と囁かれるフレンチトーストは、フランス語では「パン・ペルデュ pain perdu」と言い「無駄にしたパン」という意味。
時間が経って固くなってしまった(だめにしてしまった)パンを利用して作ったことからそう呼ばれます。
- crème …クリーム
- brûlé(e) …焼いた・焦がした
- pain …パン
- perdu(e) …無駄にした、ロスした
crème・pain は名詞、brûlé(e)・perdu(e)は形容詞です(厳密には動詞の過去分詞が形容詞化したもの)。
そしてフランス語では原則的に“形容詞は名詞の後ろ”がルール。英語と逆ですね。
多くのお菓子の名前はこのルールに則って「そのものを指す名詞、形容詞」という語順で構成されています。
同様の例をさらに挙げてみましょう。
marron gracé
マロン・グラッセ
cake salé
ケーク・サレ
fromage blanc
フロマージュ・ブラン(牛乳から作る熟成させていない柔らかなチーズ)
- marron …栗(実の大きなもの)
- glacé(e) …凍った、糖衣でコーティングした(糖衣が氷のように見えることから)
- cake …パウンド型で焼いた四角いケーキ
- salé(e) …塩味の
- fromage …チーズ
- blanc,blanche …白い
地方菓子
フランス菓子には発祥の地名をそのまま冠した名前を持つものも沢山あります。
canelé bordelaise
カヌレ・ボードレーズ(ボルドー地方の焼菓子)
gâteau basque
ガトー・バスク(バスク地方の焼菓子)
crêpe normande
クレープ・ノルマンド(ノルマンディー地方のクレープ)
far breton
ファール・ブルトン(ブルターニュ地方のケーキ)
- canelé …カヌレ(バニラ、ラム酒などで香りづけしたケーキ)
- bordelais(e) …ボルドー地方の
- basque …バスク地方の
- crêpe …クレープ
- normand(e) …ノルマンディー地方の(crêpe normande はリンゴ入りクレープ)
- far …卵、バター、砂糖、小麦粉を混ぜプラムを入れたケーキ
- breton(ne) …ブルターニュ地方の
いずれも「○○地方の」という形容詞がついています。フランスには他にも地方色豊かなお菓子がたくさんあるので、旅行の楽しみの一つにしてみてはいかがでしょうか?
お祭りの屋台で買い食いをするのって楽しいもの。フランスには神社のお祭りのようなものはありませんが、移動遊園地には食べ物の出店もずらっと並び、楽しい雰囲気を楽しむことができます。
今回はそんな移動遊園地で見かけるお菓子について覗いてみましょう。
お祭りでお菓子を買おう
今日の花子さんは、マリーさんに移動遊園地に一緒に行っていいか尋ねているようです。その理由とはいったい何なのでしょうか?
会話
Hanako : Il y aura une fête foraine bientôt.
もうすぐ移動遊園地がくるでしょ。
Est-ce que tu y vas avec tes enfants ?
あなた、子供たちと一緒に行くかしら?
Marie : Oui, certainement.
ええ、きっと行くわよ。
Hanako : Je pourrai venir avec vous ?
あなたたちと一緒に行ってもいい?
Marie : Oui bien sûr. Mais pourquoi ?
ええ、もちろん。でもどうして?
Hanako : Enfin, à la fête, il y a beaucoup de confiseries que j’aimerais bien goûter par curiosité.
ええとね、移動遊園地には、興味本位で試してみたいお菓子がたくさんあるの。
Pourtant, je ne pense pas que je pourrai les aimer… mais j’aimerais les goûter tout de même !
でもね、好きになれるとは思わないのよね…でもそれでも試してみたいの!
Marie : Tu veux donc prendre un peu de chaque confiserie de mes enfants.
つまり、子どもたちのお菓子をすべて少しず摘みたいってことね。
Hanako : Ça te dérange ? Je paierai tout, justement je ne veux pas les jeter après avoir gouter…
ダメかしら?試した後に捨てるのがいやなだけだから、全部お支払いするわよ。
Marie : Pas de problème.
大丈夫よ。
Hanako : Ah, il faut aussi partager une barbe à papa !
ああ、綿あめも分けっこしないとね!
Elle est tellement grande que je ne peux jamais terminée.
大きすぎて全部食べれたことがないのよ。
フランスのお祭りで見かけるお菓子
フランスには日本の神社のお祭りのようなものはありませんが「fête foraine 移動遊園地」では、食べ物の出店もずらっと並び、少し日本のお祭りとイメージが重なります。
トラックの荷台がお店になっているので、日本の屋台より大きいうえに、デコレーションも凝ったものになっています。
confiserie
「confiserie」は「砂糖漬」やそれを売るお店や工場の事ですが、甘くて小さなお菓子全体を指すこともあり、日本の駄菓子といったイメージに近いかもしれません。
フランスのお祭りで売られている「confiserie」は、とにかくカラフル!
赤やピンク、黄色などのかわいらしいものから、真黒で毒々しいものなどバラエティ豊かで子供たちの目は釘付けです。
そして味はとても甘いうえに、サイズも日本の駄菓子などより大きいものがほとんど。
花子さんのように興味本位でちょとだけ食べてみたい、色々食べてみたい、という大人には辛いかもしれません。
canne de sucre d’orge
- canne ステッキ
- sucre 砂糖
- orge 大麦
「canne de sucre d’orge」は杖の形をした飴のこと。
名前には「sucre d’orge 大麦糖」とは言っていますが「sucre d’orge」は使われておらずグルコースでできているそうです。
guimauve
「guimauve」は「マシュマロ」のこと。日本でも「ギモーブ」と呼ばれることもありますね。
pomme d’amour
- pomme りんご
- amour 愛
「pomme d’amour」は「りんご飴」のことです。
barbe à papa
- barbe ひげ
- papa パパ
「barbe à papa」は直訳すると「パパのひげ」ですが、これはピンク色をしたキャラクター「バーバパパ」のこと。
出店で売られるピンクのふわふわしたもの、そう「barbe à papa」は「綿あめ」のことです。
churros
「churros」は「チュロス」のことで「chichis」とも呼ばれます。
フランスの「churros」はU字型ではなく、まっすぐのI字型が主流です。
croustillons
「croustillons」は、スプーンですくってざっくり揚げたドーナツのような揚げ菓子で、「croustillons de foire」や「croustillons hollandaise」とも呼ばれます。
「カリカリした」という意味の「croustillant」と綴りも発音も似ているので、混同しないようにしてくださいね。
gaufre
「gaufre」は「ワッフル」のこと。お祭りで売られているのは「gaufre de Bruxelles ブリュッセルのワッフル」と呼ばれる薄目で長方形のもの。たっぷりの粉砂糖がまぶされています。
日本でベルギーワッフルと呼ばれる丸くて分厚いものは「gaufre de liègeリエージュのワッフル」で、お祭りなどでは見かけることがありません。
まとめ
カラフルでちょっと体に悪そうな「confiserie」や「pomme d’amour」、シンプルな「croustillons」や「gaufre」まで…
日本のお祭りでも見かけるものもありますが、フランスのお祭りで見かけるお菓子たちは「お祭り値段」になっていないのも日本人から見るとビックリさせられます。
その分気軽に買うことができるのでフランスの「pomme d’amour」や「barbe à papa」を食べながら、日本のお祭りとの違いをフランス人に説明してあげるのも楽しいかもしれませんよ。