フランス夏季の気候変動:暑さと水不足に備える

  1. フランス語講座

フランスの夏は湿気が少なく暑くなくて過ごしやすい。そう思っていませんか?ところがフランスでも、夏はどんどん暑くなり、水不足も重なって過ごしやすいとはいえなくなってきています。

今回はそんなフランスの夏の暑さと水不足について覗いてみましょう。

フランス夏季の気候変動:暑さと水不足に備える

毎日暑すぎる!

今日の花子さんは、田舎の別荘で夏のバカンスを過ごしているマリーさんと電話中。毎日の暑さに愚痴をこぼしているようです。

会話

Hanako: Qu’est-ce qu’il fait chaud tous les jours…

毎日なんて暑いんでしょう…

Marie: Oui, en plus, il ne pleut pas du tout cet été. 

ええ、それにこの夏は全然雨が降らないわね。

À cause de la sécheresse, la pelouse de mon jardin est toute morte.

この日照りのせいで、庭の芝生が全部枯れてしまったわ。

Hanako: Tu n’as pas arrosé?

水やりをしなかったの?

Marie: Non, en ce moment, il y a des restrictions d’eau dans cette région à cause du manque d’eau. 

していないわ。今この地域では、水不足のせいで水の使用制限があるのよ。

Hanako: Ah oui, on en parle beaucoup à la télé. 

ああ、そうだった。テレビでよく話しているわね。

Il ne faut ni arroser ni laver la voiture, et encore moins remplir la piscine, c’est bien ça?

水やりも洗車もダメで、プールに水を入れるのなんてもってのほか、だっけ?

Marie: C’est ça. On dit aussi qu’il y a un risque de production d’électricité à cause de cette canicule.

そうそう。この酷暑のせいで、電気が不足するリスクもあるらしいわよ。

Hanako: C’est parce que l’on utilise trop de climatiseur?

エアコンを使いすぎるから?

Marie: Non, parce que la température d’eau est si élevée qu’il est impossible de refroidir le réacteur nucléaire.  

いいえ、水の温度が高すぎて、原子炉を冷やすことができないからよ。

手には水が出る蛇口を持っており、フランスの噴水を彷彿とさせます。

ポイント

sécheresse

sécheresse」は「乾燥、日照り」のこと。文中ではマリーさんが「雨が全く降らずに乾燥しているせいで、庭の芝生が枯れてしまった」と嘆いていますね。

このように「sécheresse」は天候について使用するほか、お肌の乾燥や土地の乾燥などに対しても使われます。

période de sécheresse

乾季

sécheresse de la peau

お肌の乾燥

sécheresse du sol

土地の乾燥

restriction d’eau

restriction」は「制限、拘束」のこと。「restriction d’eau」は「水の使用制限」という意味ですね。目的はもちろん「économie d’eau 節水」のためです。

restriction d’eau」には4レベルあり、内容はそれによって違いますが、よく耳にするのが下記の3つです。

  • arroser 水を撒く=水やりをする
  • laver la voiture 洗車
  • remplir la piscine プールを(水で)満たす

manque d’eau 水不足」の度合いによっては、個人宅だけでなく「agriculture 農業」での畑への水やりも禁止されることがあります。

canicule

「canicule」は「酷暑」のこと。3日間連続で昼と夜の気温が共に高いときに使われる表現です。

それ以下の期間の場合は「vague de chaleur 熱波」と表現されます。

climatiseur

climatiseur」は「エアコン」のこと。口語では「clim」と省略されることがほとんどです。

日本では一家に一台どころではなく、一部屋に一台有るのが普通な「climatiseur」ですが、フランスではあまり普及していません。

そして古い家が多く取り付けが難しいため、壁に取り付けるタイプではなく「climatiseur mobile 可動式のエアコン」が主流です。

工事なしですぐに使えるのがメリットですが、室外機がないタイプなので、音がうるさい・排気ダクトを出すために窓を開けなければいけない、などデメリットもたくさんあります。

フランスのエアコン事情はこちらの記事もご覧くださいね。

フランスの青い背景の前で扇子を持つ男性。

年々暑くなるフランス

フランス全土で暑さの最高警戒が発令

フランスの夏は湿気が少なく気温もそれほど高くないため、日本と比べて過ごしやすいといわれていました。

ところがフランスも温暖化の影響か年々気温が上がっており、夏は「canicule」と呼ばれる日々が続くことも珍しくありません。

同時に雨が降らないため「sécheresse」も問題になり、南仏だけでなくフランス全土で「restriction d’eau」が発令されることも。

2022年8月には4つあるレベルの内、最高警戒度である「crise 危機、難局」がなんとフランス101件中の*67県に発令されています。

*参照:Le Parisien

対策不足のフランスの暑い夏

それでも日本の夏よりは過ごしやすいことが多いのですが、フランスでは今までそれほど熱い日々が続かなかったため、暑さに対する対策が行きわたっていないのが問題です。

家やお店だけでなく、電車など公共機関にも「climatiseur」がない(有ってもあまり涼しくない)。

文中でも述べているように、原子炉の炉心を冷やすのに必要な水の温度が高いため、電子力発電所をストップする可能性があるなど。

sécheresse」で河の水位が下がっているうえに、「canicule」のせいで水温がとても高くなってしまっているそうです。

また、フランスは使用済みの水のリサイクルが進んでいません。リサイクルした水なら「restriction d’eau」の最中でも農地に撒けるのに、リサイクルされていないためそれも不可能…

農家の人はせっかく育てた作物が枯れていくのを、なすすべもなく見ていることしかできないのです。

まとめ

フランスの夏の暑さと水不足の問題についてご紹介しました。

夏休み中にフランスに旅行する際は、フランスは日本より涼しいはずと油断せずに、暑さ対策も忘れないようにしてくださいね。

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