フランス人の口から頻繁に飛び出す単語「Putain ピュータン」。カタカナで表記すると何となくかわいい響きですが、実は下品で使わない方が良い単語です。
今回はそんな「Putain」の意味や使い方を覗いてみましょう。
フランス語のスラング「Putain」ってどういう意味?
目次
「Putain」の起源と基本的な意味
「putain」はもともと「売春婦、ふしだらな女性」という意味。「gros mot 卑語」であり、「vulgaire 下品な」印象を与える言葉です。
そして「putain」は日常会話では「売春婦」の意味でつかわれることは少なく、フランス語で「売春婦」といいたい時には「prostituée」がよく使われます。
使われることは少ないですが「fille de joie」という呼び方もあります。どちらも「putain」とは違い下品な単語ではないため、「売春婦」という必要がある時はどちらかを使うようにしてくださいね。
また「pute」も「売春婦」の意味ですが、こちらも「putain」と同じく卑語のため、できれば使わない方がいいでしょう。
フランス人の日常的な「Putain」の使い方
それではフランス人が「putain」と口にするのはどんな時でしょうか。
日常会話では「putain」は怒り・驚き・感嘆を表す間投詞として使われます。日本語なら「ちくしょう」「くそっ」「マジで」「うわっ」といったニュアンスです。
フランス人がどんな時に「putain」を使うのか、まずは会話で確認してみましょう。
Nicolas: Putain!
ちくしょう!
Hanako: Ça va, Nicolas? Qu’est-ce qu’il se passe?
大丈夫、二コラ?何があったの?
Nicolas: Non ce n’est rien, j’ai juste failli faire tomber une tasse.
何でもないよ。コップを落としかけただけだから。
Hanako: S’il n’y a rien, tant mieux.
何も無いなら、良かったわ。
Tiens, je t’ai apporté un gâteau japonais auquel tu t’intéressais un autre jour.
そうそう、あなたが前に興味を持っていた日本のお菓子を持ってきたの。
Nicolas: Putain, c’est vrai? C’est très gentil.
やった、マジで?すごく嬉しいよ。
Hanako: Est-ce que tu veux le goûter maintenant?
今食べてみる?
Nicolas: Oui, s’il te plait.
うん、お願いするよ。
Putain, qu’est-ce que c’est bon!
うわっ、なんて美味しいんだ!
イライラした時
フランス人が「putain」を一番口にする場面は、何といってもイライラした時。「ちくしょう!」「くそっ!」という意味で、いわゆる悪態として使われます。
会話中では一文目、Nicolas がコップを落としそうになって、思わず「putain」と悪態をついていますね。
そんな時に使われる「putain」は、最初の「P」を強調して「ピュッタン!」、もしくは「T」も強調して「ピュゥタッーン」と発音します。
日本ではイライラしたからといって「ちくしょう」などと口にする人は少ないですよね。ところが、フランス人は老若男女問わず口にする人がとっても多い!日本人なら「あらまあ」「困るわねぇ」程度の事に対しても「putain」と口にします。
自分が何か失敗した時、やっていることが上手くいかない時、人に何か嫌なことをされた時、などなど…。
Putain, ça ne marche pas.
くそっ、上手くできない/上手く動かない。
Putain,c’est trop compliqué.
くそっ、これは複雑すぎる。
普段は「putain」と言わない人でも、車の運転中はいつもより口が悪くなり、ちょっとしたことで口に出してしまう人も多いようです。
Putain, regarde la route!
(歩行者や他の車に対しての独り言)くそっ!(ちゃんと)道を見ろよ!
上記のような独り言としての悪態ではなく、下記のようにイライラさせられた相手に面と向かって使う場合もあります。
ただし、このケースで相手に対して「putain」というのはとても失礼なこと。喧嘩に発展することもあるので、イライラしても人に対してはいわないようにしましょう。
Putain, tu m’énerve.
くそっ、ムカつく。
Putain! Qu’est-ce que tu fais!
ちょっと!何やってんだよ!
1つ目の「tu m’énerve」は「あなたが私を苛立たせる」という意味。2つ目の「qu’est-ce que tu fais」は「何をしていますか」の疑問の意味ではなく、してはいけない事や失敗をした相手に対して「何をやっているんだ」という意味です。
びっくりした時
「putain」はびっくりした時にも、フランス人の口から飛び出すことが多い言葉です。悪い意味はなく、ただの間投詞としても使われます。
例えば、人に後ろから急に声をかけられた時に…
Putain, tu me fais peur.
うわっ、びくっとさせられたよ。
話しの内容にびっくりさせられた時に…
Putain, c’est pas vrai.
マジで?あり得ない。
また文中の Nicolas のように、食べたかったお菓子を貰ったなど、嬉しい驚きがあった時にも「putain」は使われます。
Putain, c’est vrai?
やった、マジで?
褒め言葉や嬉しいことがあった時
「putain」はイライラした時やびっくりした時以外にも、良い意味でも使われます。
例えば美味しいものを食べた時に…
Putain, c’est bon!
やばっ、めちゃ美味しい!
日本人が美味しいものを食べて「やばい」というのと同じような感覚です。「putain」の本来の意味や、悪態として使われることが多いことを知っていると、とても食事中に使うべき言葉とは思えませんが…。
口にする本人にとっては、ただの間投詞といった感覚で、まったく悪気はありません。あなたが作った料理に対してこのように言われた場合でも、イライラしたりせず、褒め言葉なんだなと捉えて「Merci ありがとう」と素直に答えるようにしましょう。
他にも、友人がとても親切だった時に…
Putain, tu es super!
なんてことだ、(こんなに良くしてくれる)あんたは最高だ!
友達がとても素敵な格好をしていた時に…
Putain, tu es magnifique(e)!
やばっ、凄くすてきだよ!
何かいいことがあった時に…
Putain, j’ai trop de chance!
やばい、運が良過ぎる!
間投詞以外の「Putain」の使い方
「putain」はここまでご紹介した間投詞として以外にも「putain de+名詞」もあり、基本的には「忌々しい○○」「嫌な○○」と、悪い意味を強調する時に使われます。例えば…
Putain de voiture!
(故障が起きた時など)何て忌々しい車だ!
Quel putain de pluie!
何て嫌な雨だ!
Tu es putain de sale bête!
あんたは忌々しいほど意地の悪い奴だ!
しかし間投詞としての「putain」が良い意味でつかわれるのと同様に、良い意味でつかわれることもあります。
Putain de génie!
マジで天才!
フランス人の「Putain」に対する感覚
下品と思うフランス人
日常会話で「putain」を使うフランス人がとても多いとはいえ、もちろん使わないフランス人もたくさんいます。本当にイライラした時にはつい口にしてしまうけれど、それ以外の場合では使わないという人も多いです。
そもそもの意味が「売春婦」と良い意味ではなく、かつ卑語のため、その単語を口にすること自体が嫌だ・下品だと感じるようです。日本でも「くそっ」や「ちくしょう」が下品だと感じるのと同じ感覚ですね。
何とも思わないフランス人
実際のところ「putain」を使うフランス人は多すぎるため「gros mot」であるという意識も全体的に薄れています。そのため、上品な印象で「gros mot」を使わなさそうな人の中にも、良い意味では使うという人もいます。
会話中では Nicolas が3回も「putain」を使っていますが、このように「putain」を多用するフランス人も本当にいます。そんな人たちは、まるで「putain」がただの相槌や間投詞であるかのごとく、どんな場面でも使います。口癖になってしまっているのですね。
ただ使う人たちに悪気は無くても、下品な単語を何度も耳にするのは、日本人にはストレスになることもあるでしょう。そんな時にできれば控えてほしいと相手に伝えても、無意識に口にしているのでなかなか直らないものなのです。
「Putain」を使う外国人に対するフランス人の反応
自分は「putain」を使っていても、外国人が使っていると下品な単語を使っているな、と感じるフランス人も多いようです。わざわざフランス語を勉強しているのだから、汚い言葉は使わなくても…と思うのでしょうか。
特に日本人は服装や態度など、小ぎれいで上品な印象の人が多いですよね。また、スラングだらけのフランス語ではなく、きちんとしたフランス語を話そうと努力をします。
そんな人が「putain」を使うと、全体的にちぐはぐな印象を与えてしまい、下品な単語だけが特に目立ってしまうことに。
「Il vaut mieux de ne pas utiliser ce mot その単語は使わない方が良いよ」といわれることもあるかもしれません。
「Putain」を使うべきかどうかの判断
「putain」はできれば使わない方が良い単語ではありますが、特に若い人たちは何とも思わず、乱発する人も多いでしょう。
相手が使っているなら、その人との会話では基本的には使っても問題はありません。しかし上記でも述べたように、自分は使っていても私たち外国人が使っていると気になるというフランス人もいます。
そして「putain」を乱発するフランス人も、使ってはいけない場所や相手というのは、きちんと理解しています。
しかし外国語としてフランス語を学んでいる私たちには、言葉の本当のニュアンスを掴むのは難しく、使っても大丈夫かの判断を誤ってしまうこともあるでしょう。
卑語と知っていても、卑語であるという認識が薄いため、使うべきでない場面で「putain」を使ってしまい、周りの空気を悪くしてしまうかもしれません。
「putain」は発音しやすく、一度使いだすと癖になりやすい単語です。下品な言葉を使う人だなと思われたくないなら、最初から使わないように気を付ける方が良いでしょう。
「Putain」を代用できるフランス語
「putain」をできるだけ使わず、きれいなフランス語を話すためにも、代用できる単語を覚えておきましょう。何度も口に出して練習しておくことで、つい「putain」と言ってしまうのを防げるようになりますよ。
Zut!
「Zut」は不満や苛立ちを表す間投詞。「ちくしょう」「くそっ」から、「あ~あ(残念)」「ふ~ん」「なんだ」まで、幅広いニュアンスで使うことができます。
日本語では「ちくしょう」「くそっ」と訳すことも多いですが、「putain」とは違い下品な印象を与えることは無いので、安心してくださいね。
Zut, je n’y arrive pas!
くそっ! (自分にはこれが)出来ない!
Zut, il commence à pleuvoir.
あ~あ、雨が降り出しちゃった。
他にも、悲しい話や残念な話を聞いたときに「なんてことだ」「残念だね」のニュアンスで使うこともできます。
A:J’ai raté mon examen…
試験に失敗しちゃったよ…
B:Zut. Mais ça ira la prochaine fois.
残念だね。でも次回は大丈夫だよ。
「Zut」は「putain」の代わりに使いやすい表現ですが、「putain」と違い良い意味では使われません。
美味しいものを食べて「× Zut,c’est bon!」と言わないように注意しましょう。
Mince!
「mince」は「薄い、細い」という意味ですが、「ちぇっ」や「しまった」のように軽い驚きや落胆を表す間投詞としても使われます。「putain」や「Zut」とは違い、イライラした時にはあまり使われません。
Mince, j’ai oublié mon portefeuille.
しまった、財布を忘れてしまった。
誰かに自分の失敗を指摘された場合にも使えます。例えば並んでいる人がいるのに気がつかず、割り込みをしそうになった場合に…
A:Monsieur, il y a la queue là. Il faut attendre.
ムッシュー、ここに列があります。(列に並んで)待っていてください。
B:Mince! Je suis désolé, je n’ai pas fait attention.
しまった!すみません、気がついていませんでした。
Punaise!
「Punaise」は「ナンキンムシ」のこと。驚きや悔しさを表す表現としても使われます。
Punaise! Elle est brûlée ma tarte!
なんてこと!タルトが焦げてしまったわ!
Ça alors!
「Ça alors」は「まったく何てこった」とびっくりする気持ちを表す表現です。人から思いがけない話を聞いたときなどに使いましょう。
A:Tu sais, ils se sont divorsés il y a une mois.
知ってる?彼らは一か月前に離婚したんだって。
B:Ça alors! Mais je crois qu’ils ont acheté une maison il y a peu de temps…
何てこと!でも、彼らはちょっと前に家を買ってたと思うんだけど…
Que ~ / Qu’est ce que ~!
「Que」と「Qu’est ce que」はどちらも「何て~、何と~」と感嘆文を導く表現です。
例えば「Putain, c’est bon!」の代わりに…
Que c’est bon!
何て美味しいんだ!
例えば「Putain, tu me fais peur」の代わりに…
Mais qu’est ce que tu me fais peur!
すごいびっくりさせられたよ!
Quel / Quelle ~!
「Quel / Quelle~」も「Que」や「Qu’est ce que」と同様に「何て~、何と~」を意味しますが、こちらには文ではなく名詞が続きます。
例えば「Putain, j’ai trop de chance!」の代わりに…
Quelle chance!
なんて運がいいのだろう!
例えば「Putain de génie!」の代わりに…
Quel génie!
何て才能だ!
例えば「Quel putain de pluie!」の代わりに…
Quel pluie!
何て雨だ!
Mais
「Mais」は「しかし、でも」という意味でよく使われますが、「驚き・怒り・苛立ち」を伝えられる表現でもあります。
イライラしたときに使う「putain」の代わりに使ってみましょう。
例えば「Putain, ça ne marche pas.」の代わりに…
Mais ça ne marche pas!
なんで!?上手くできない/上手く動かない!
例えば「Putain! Qu’est-ce que tu fais!」の代わりに…
Mais, qu’est-ce que tu fais!
ちょっと、何やってるのよ!
このように「putain」を上品に言い換える表現はいろいろあります。シチュエーションに合わせて使い分けてくださいね。
「Putain」以外の下品なフランス語
フランス人は「putain」以外にもいろいろな「gros mot」を口にします。もちろん使わない方がよい単語たちですが、何気なく使ってしまうことが無いように、意味は覚えておきましょう。
「putain」と同様に、独り言の間投詞的な悪態として使われるフランス語はこちら
Merde
「putain」と同じくらいフランス人が口にする「gros mot」がこの「merde」。そもそも「糞」という意味で、「putain」と同様に「くそっ」と間投詞的に使われます。
Faire chier
「chier」は「糞をする」、「faire chier à qn」で「(人に)糞をさせる」という意味ですが、「(人を)困らせる」=「うざい、うっとうしい」という意味で使われます
そして「Faire chier」は正しくは「Ça me fait chier それが私を困らせる」や「Tu me fais chier あんたが私をうんざりさせる」などの文ですが、それが短くなったもの。
物事が上手くいかない、誰かにイライラさせられたというときに、「putain」と同様に間投詞的に口にされることが多い表現です。
「putain」や「merde」よりも更に下品で、侮辱度も高いため、人に対しては面と向かって言わないよう、特に注意してください。
フランス語の「gros mot」はこちらの記事で詳しくご紹介しています。
まとめ
フランス人が気軽に口にするので、つい真似して使ってしまう単語「putain」。人によっては嬉しい時など良い場面で使うこともありますが、決して良い意味の単語ではありません。
安易に使っていると、育ちが悪い、頭が悪いなど、相手に悪い印象を与えてしまいがちです。周りが使っているからと流されず、きちんと意味を知って、使うかどうか判断してくださいね。