フランスではパック入りの魚が少なく、お目当ての魚を手に入れるには、魚屋さんとコミュニケーションをとりつつ、購入する必要があります。
今回はそんな時に役に立つ、魚に関するフランス語を見てみましょう。
魚屋で役立つフランス語:魚の名前と買い方をマスター!
目次
フランスの魚屋での買い物の流れ
まずはフランスの魚屋での会話を例に、買い物の流れを確認しましょう。
フランスの魚屋さんでの会話例
Hanako : Bonjour, je voudrais un bar, s’il vous plaît.
こんにちは。スズキを1匹ください。
Poissonnier : Bonjour madame. Je vous le fais en filet?
魚屋:こんにちは、マダム。フィレにしますか?
Hanako : Pouvez-vous juste l’écailler et le vider, s’il vous plaît.
鱗を落とすのと内臓を抜くのだけお願いします。
Poissonnier : Je coupe la tête?
頭を落としますか?
Hanako : Non, vous la gardez.
いいえ、そのままにしてください。
Poissonnier : Entendu. Il vous faut autre chose?
分かりました。他に何か必要ですか?
Hanako : Je prends un kilo de sardines et une douzaine de bulots aussi.
イワシを1キロと、エゾバイ(貝の一種)を12個ください。
Poissonnier : Les sardines, vous les voulez en filet ou entier ?
イワシはフィレと丸ごと、どちらでしょうか?
Hanako : Entier, s’il vous plaît.
丸ごとをお願いします。
Et deux morceaux de cabillauds. Est-ce qu’ils sont désarêter?
後、真ダラ2切れも。骨は抜いてありますか?
Poissonnier : Bien sûr, Madame. Ce sera tout?
もちろんです、マダム。以上ですか?
Hanako : Oui, ce sera tout. Merci.
はい、以上です。ありがとう。
魚屋での買い物の流れ
フランスの魚屋では、氷の上に色々な魚が直接並べて売られています(スーパーではパック入りの魚も若干売られています)。丸ごとの魚だけでなく、皮が引かれた半身も直接氷の上に乗せられているため、初めて見るとびっくりすることでしょう。
そんなフランスの魚屋では、一匹や一切れ単位の値段ではなく、キロ単位の値段が表示されています。そのため、お店の人に欲しい魚や量を伝える→重さを測ってもらう→値段シールを袋に貼ってもらう、という流れで購入する必要があります。
丸ごとの魚を処理してもらう場合は、重さを測った後に処理をしてもらえますよ。
量り売りは好きなだけ購入できる利点もありますが、一匹や一切れ単位で指定した場合に、思ったよりも高くなってしまうこともありますよね。多すぎたり少なすぎたりする場合は、下記のように希望を伝えましょう。
Je préfère plus petit / grand.
(一匹や一切れ単位の場合に)もっと小さい/大きいものがいいです。
Je voudrais un peu moins / plus.
(キロ単位の場合に)少し減らして/プラスしてください。
先にいくらになるかを知りたいというときは、下記のように質問してみましょう。実際に測って重さや値段を伝えてもらえますよ。
Ça fait combien de gramme / kilo?
何グラム / キロになりますか?
Ça fait combien?
いくらになりますか?
魚屋で買い物をするための重要ポイント
魚屋に限らず、フランスで買い物をするときは「Bonjour こんにちは」で会話をスタートさせましょう。
特にお店の人が少し遠くにいたり、こちらに気がついていないときは、日本の感覚で「Excusez-moi すみません」と声を掛けたくなりますが、そんな時も「Bonjour」でOKです。
お店の人が先に「Bonjour」と声をかけてくれた時も、いきなり注文をしてはいけません。必ず「Bonjour」と返してから注文してくださいね。
魚屋の前で順番を待っている人が数人いることもあります。列ができていれば良いのですが、きちんと列になっておらず、順番がわからないことも。
そんな時はまずは周りを見渡し、紙の番号札があればそれを取っておきます。順番が来たら番号を呼んでもらえるので、「C’est moi 私です」と返事をし、「Bonjour」と続けましょう。
番号札が無いときには、先に居る人達を覚えておきます。そしてお店の人が「C’est à qui? 誰の番ですか?」と言ったら、すかさず「C’est moi」や「C’est mon tour 私の番です」と言いながら軽く手を挙げましょう。
フランスではきちんと自己主張しないと、後から来た人に順番を抜かされてしまいますよ。
魚屋でよく使うフランス語
お目当ての魚があるのなら、魚屋さんとコミュニケーションを取りながら購入する必要があります。そんな時に便利なフランス語を見てみましょう。
魚の切り身や丸ごとのフランス語表現
【filet】
「filet」は「(三枚おろしにした魚の)切り身」のこと。他にも肉の部位の「ヒレ」、鶏肉の「胸肉」も「filet」と呼びます。
魚によっては、切り身と丸ごとのどちらも売っていることがあり、どっちが欲しい?と聞かれることもあるでしょう。
切り身が欲しいなら「en filet」、丸ごとの魚が欲しい時は「entier」と注文します。
Je voudrais un kilo de sardines en filet / entier.
フィレになっている / 丸ごとのイワシを1キロください。
魚屋で丸ごとの魚を「filet」にしてもらうこともできます。「faire en filet」は「三枚におろして切り身にする」という意味で、肉には使われない魚特有の表現です。
Pouvez-vous le faire en filet, s’il vous plaît.
それを三枚おろしにしてください。
【morceau】
「morceau」は「一片」という意味で、魚の場合は「一人用の切り身」に使う表現です。
「morceau」と半身の「filet」、はたまた「entier」が同時に売られている魚もあるので、どれが欲しいのかしっかり指定できるといいですね。
大きな魚の場合は、丸ごとや大きな切り身の状態から、好きなサイズの「morceau」を切ってもらえることもあります。
「○○cm d’épaisseur ○○センチの厚さ」 と伝えるか、指で厚さを示して「comme ça この位」と言いましょう。
魚の処理方法のフランス語表現
【écailler】
「écailler」は「うろこを落とす」という意味で、「écaille うろこ」から発生した動詞です。
丸ごとの魚は「écaille」が付いたまま売られているので、自分でできないなら魚屋さんに「écailler」するようお願いしましょう。
【vider】
「vider」は「空にする、(中身を)捨てる」といった意味ですが、「魚の内臓を取り除く」という時にも使います。
【couper la tête】
「couper la tête」は「頭を切る」、魚の頭を切り落とす時に使える表現です。「頭を落とす」には「décapiter」という単語もありますが、こちらは人の首を切るときに使う表現なので、魚には使わないでくださいね。
【garder】
「garder」は「守る、保存する」という意味です。魚屋では、頭や内臓をそのままにしておいて欲しい時に使えます。
【désarêter】
「désarêter」は「魚の骨を取り除く」という意味で、「arête 魚の骨」から派生した表現です。その日の調理法に合わせて、単語を組み合わせて処理をお願いしましょう!
pouvez-vous juste écailler, s’il vous plaît.
うろこだけとってください。
Pouvez-vous écailler et vider, sans couper la tête, s’il vous plaît.
頭は落とさずに、うろこと内臓を取ってください。
その他の便利なフランス語表現
【une douzaine】
「une douzaine」は「1ダース(12個)」という意味で、貝類によく使われる表現。2ダースや3ダースは「deux douzaine」「trois douzaine」といいます。
半ダースは「une demi douzaine」ですね。他には「une dizaine 10個」も使われます。
もちろん12の倍数や10個単位でしか購入できないことは無く、個数やグラムなどで指定しても構いません。
【piéce】
「piéce」は「一個、一つ」という意味で、貝類などをダースではなく数個だけ買いたい、というときに便利な表現。「morceau」と同様に、魚の切り身に対しても使えます。
フランスの魚の種類
フランスでポピュラーな魚には、いったいどんなものがあるのでしょうか。日本でもポピュラーなものから、珍しいものまで…。フランス人はあまり魚を買わないイメージがありますが、意外にも魚屋の品ぞろえは豊富なんですよ。
フランスでポピュラーな魚の名前
- Anchois アンチョビ
- Bar スズキ
- Cabillaud タラ
- Carrelet/Limande カレイ
- Chinchard アジ
- Congre アナゴ
- Daurade タイ
- Espadon メカジキ
- Hareng ニシン
- Julienne タラの一種
- Lieu 黒タラ
- Lotte アンコウ
- Maigre コルビナ
- Maquereau サバ
- Merlan メルラン
- Merlu/Colin メルルーサ
- Mulet ボラ
- Raie エイ
- Rouget barbet ヒメジ
- Sabre タチウオ
- Sardine イワシ
- Saumon サーモン
- Sole シタビラメ
- Thon マグロ
- Turbot イシビラメ
フランスで特に人気の魚
フランスで人気なのは、大きくて「arête」がない(調理の時点で取り除いてある)魚です。そんなフランスで好まれる代表的な魚はこちら!
【Saumon】
フランス人が好きな魚の代表は、なんといっても「Saumon」。日本のような薄い切り身の塩鮭は無く、生鮭が売られています。
大きな「morceau」の状態で並んでいることが多いですが、「filet」や「entier」で売られていることもあります。他にも「darne 筒切り」にされていることもあり、売り方の多様さからも人気があるのがわかりますね。
そしてフランスでは「Saumon fumé スモークサーモン」を食べる文化があるため、生魚は嫌いだけど「Saumon」なら生でも食べるという人も少なくありません。
寿司屋でも人気NO1のネタで、「Saumon」だけの握りの盛り合わせというメニューもあります。
【Cabillaud】
タラは色々な種類がありますが、そのなかでもフランス人に人気なのが「Cabillaud」です。
フランス人に人気ではありますが、全体的に脂が少なくパサパサしているので、日本のギンダラを想像しているとがっかりするかもしれません。
シンプルに塩焼きにするのではなく、たっぷりソースをかけるなどフランスらしい料理法にすると美味しくいただけますよ。
フランス人が嫌いな魚
魚屋にはいろいろな魚が売られていますが、実は魚が嫌いというフランス人はとても多く、味は嫌いじゃないけど好きじゃないという人もいます。魚嫌いなフランス人に理由を聞いてみると…
Je n’aime pas l’odeur de poisson.
魚の臭いが嫌い。
Il y a des arrêtes.
骨がある。
魚が嫌いなのは、臭いが苦手、そして骨があるから嫌だ、というのが大きな理由なようです。
そのため「Sardine」「Maquereau」「Chinchard」など、日本ではよく食べられている青魚は、フランス人が嫌がる魚の代表格。
もちろん好きな人も多いのですが、他の魚は食べられても、これらの青魚は嫌いと答えるフランス人はとても多いのです。
日本とフランスの違い
日本とフランス、両方の国でポピュラーな魚もありますが、売られ方には違いがあります。
日本では「filet」で売られることも多い「Daurade」や「Bar」などの白身魚は、フランスでは「filet」ではなく「entier」で売られています。サイズが小ぶりで、値段も手ごろなものが多いようです。
「filet」で売られている白身魚は淡白なタラ系がメインなので、脂ののった白身魚を食べたい場合は、丸ごとの「Daurade」や「Bar」などを購入する必要があります。
「Maquereau」も 日本と比べて小ぶりでほっそり。切り身ではなく丸ごと購入するのが基本ですが、値段が安いため、魚屋さんにお願いしても処理してもらえないケースもあります。
日本では刺身用として売られることが多い「Thon」は、フランスではマグロステーキ用に厚切りにされています。
そして「Sardine」。日本ではパック入りできれいに並んで売られていますよね。フランスの「Sardine」は、氷の上に山盛りにされて売られています。それを店員さんがぐわっと手づかみ、もしくはスコップで掬って袋に入れます。
安い魚のためか扱いが悪いのですが、傷みやすい魚なため、遠目ではきれいに見えても実際は傷んでいることも少なくありません。しっかり近くで確認してから買うようにしてくださいね。
フランスの甲殻類や貝類
フランスでは魚だけでなく、甲殻類や貝類も食べられています。魚のフランス語名を覚えたら、甲殻類や貝類の名前も憶えておきましょう。
フランスでポピュラーな甲殻類や貝類の名前
フランスの魚屋やレストランなどで、よく見かける甲殻類や貝類はこちら!
【甲殻類】
- Crevette エビ
- Homard オマール
- Langouste イセエビ
- Langoustine ラングスチーヌ
【貝類】
- Bigorneau 海貝
- Bulot エゾバイ
- Coque カラス貝
- Coquille Saint-Jacques ホタテ貝
- Couteau マテ貝
- Huître カキ
- Moule ムール貝
- Palourde アサリ
【その他】
- Calamar ヤリイカ
- Oursin ウニ
- Poulpe タコ
フランスで特に人気の甲殻類や貝類
【Huître】
フランスの貝といえば「Huître」を思い浮かべる方も多いのでは?冬のご馳走の代名詞の一つですね。食べ方はとてもシンプル。殻を開けて、生のままレモンや酢をかけて頂くのがフランス流です。
フランスの「Huître」の詳しい買い方や食べ方は、こちらでご紹介しています。
【Moule】
「Moule」は日本ではあまり食べられませんが、フランスではパック入りになったものがスーパーなどでも購入できるポピュラーな食べ物です。
お値段も手ごろなため、「Huître」のように数個だけ買うことは少なく、大量に購入するのが一般的。魚屋で購入する場合は「douzaine」の単位ではなく「un litre 1リットル」を使いましょう。大きな計量カップでごそっと掬ってくれます。
食べ方は蒸した「Moule」に「frites フライドポテト」を添えた「moules frites」が定番です。
【Crevette】
「Crevette」はフランス人がよく魚屋で購入するものの一つで、殻付きで茹でたものが売られています。日本では茹でた状態で売られることは少ないので、初めて見た人はびっくりすることでしょう。
そしてもう一つびっくりするのが、背ワタを取らずに茹でてあること。フランス人はそんな「Crevette」を、殻だけ剥いてそのまま食べます。
大きい「Crevette」でも背ワタ付きなため、日本人の中には抵抗を感じる方も多いのでは?そんな場合は、冷凍コーナーで売られている生の「Crevette」を買って、自分で下処理をするのがおすすめです。
フランスでは「Crevette」以外の甲殻類も好まれます。しかし、日本と同様にお値段が高いため、日常的な食材ではなく、クリスマスのご馳走やレストランで奮発して食べるものという感覚です。
日本とフランスの違い
日本で甲殻類や貝類は、そのまま食べるよりも料理の具の一つとして扱われることが多いですよね。フランスでは日本とは違い、生のまま、もしくは加熱してそのまま食べるのが一般的です。
特に「Plateau de fruit de mer 海の幸の盛り合わせ」はフランス人が好む冬のご馳走の一つ。生の「Huître」の他に、茹でただけの「crustacés 甲殻類」や「mollusques 貝類」が氷の上に盛り付けられた冷たい料理です。
まとめ
今回は魚屋で役に立つフランス語をご紹介しました。日本とフランスは魚の売り方が違うので、最初は少し戸惑ってしまうかもしれませんが…。
美味しい魚を食べるために、覚えた単語を駆使してお店の人とコミュニケーションをとってくださいね。