フランスでの就職や駐在が決まった!あるいは、フランスの企業やフランス人と仕事をする機会が増えた。そんな時、現地の職場で円滑な人間関係を築き、スムーズに業務を進めるためには、適切なコミュニケーションが不可欠ですよね。言葉の壁はもちろん、日本とは異なる文化や習慣に戸惑うこともあるかもしれません。
挨拶や自己紹介は基本中の基本ですが、「行ってきます」「ただいま」はフランス語でどう言うの? 同僚や上司への言葉遣いは? 電話やメールのマナーは? 日本の常識が通用しない場面でどう振る舞えばいい? そんな疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、フランスの職場で役立つフランス語コミュニケーションを徹底解説!基本的な挨拶や自己紹介フレーズから、電話応対、メールの書き方、会議で使える表現、さらにはフランスならではの働き方やコミュニケーションのコツまで、具体的な例文や文化的背景を交えながら、実践的にご紹介します。これを読めば、フランスの職場でのコミュニケーションに自信が持てるようになるはずです!
新入社員・駐在員必見!フランス語での職場コミュニケーション完全ガイド
目次
第一印象が肝心!職場での挨拶と自己紹介
新しい環境に飛び込む時、最初の挨拶と自己紹介は非常に重要です。フランスの職場での基本的なマナーを押さえましょう。
基本の挨拶:「Bonjour」と「Bonsoir」
フランスの挨拶はシンプルです。朝から夕方(日が暮れる前)までは「Bonjour (ボンジュール) – おはようございます/こんにちは」、夕方以降は「Bonsoir (ボンソワール) – こんばんは」を使います。これは、社内の同僚、上司、部下、社外の取引先やお客様、誰に対しても共通です。役職や立場によって挨拶を変える必要はありません。
より丁寧にしたい場合は、相手の名前や役職、あるいは「Monsieur(ムッスュー – 男性へ)」「Madame(マダム – 女性へ)」を付け加えます。
Bonjour Monsieur Dubois. (ボンジュール ムッスュー デュボワ) – デュボワさん、おはようございます。
Bonsoir Madame Leroy. (ボンソワール マダム ルロワ) – ルロワさん、こんばんは。
Bonjour Monsieur le Directeur. (ボンジュール ムッスュー ル ディレクトゥー) – 部長、おはようございます。
同僚など、親しい間柄(あるいは職場全体の雰囲気がカジュアルな場合)では、「Salut (サリュ) – やあ」という挨拶も頻繁に使われます。日本語の感覚だと職場には不向きに聞こえますが、フランスではごく一般的です。
初めての自己紹介:「Enchanté(e)」を忘れずに
新しい職場での最初の自己紹介は、簡潔で構いません。
Bonjour, je suis Yamada Taro. Enchanté.
(ボンジュール, ジュ スイ ヤマダ タロウ. アンシャンテ.)
こんにちは、山田太郎です。はじめまして。
Bonjour, je m’appelle Suzuki Hanako. Enchantée.
(ボンジュール, ジュ マペル スズキ ハナコ. アンシャンテ.)
こんにちは、鈴木花子と申します。はじめまして。
名前を名乗った後に添える「Enchanté(e) (アンシャンテ)」は、「(お会いできて)嬉しいです」という意味で、日本語の「はじめまして」に相当します。自分が男性なら Enchanté、女性なら Enchantée と、語尾に”e”を付けます(発音は同じ)。
より丁寧に言いたい場合は「Je suis enchanté(e) de faire votre connaissance. (ジュ スイ ザンシャンテ ドゥ フェール ヴォートル コネサンス) – お知り合いになれて大変嬉しいです」となりますが、日常的な職場の挨拶では「Enchanté(e)」だけで十分です。
部署全体の前などで自己紹介する場合は、簡単な経歴や役割を付け加えると良いでしょう。
Bonjour à tous. Je suis Tanaka Kenji. Je viens d’arriver de Tokyo. Je travaillerai dans l’équipe marketing. Enchanté.
(ボンジュール ア トゥス. ジュ スイ タナカ ケンジ. ジュ ヴィアン ダリヴェ ドゥ トキョ. ジュ トラヴァイユレ ダン レキップ マーケティング. アンシャンテ.)
皆さん、こんにちは。田中健司です。東京から着任しました。マーケティングチームで働きます。どうぞよろしくお願いいたします。
注意: 日本と異なり、自己紹介で年齢や家族構成などに触れることは一般的ではありません。

第一印象は笑顔で「Bonjour, enchanté(e)!」
毎日のコミュニケーション:職場で使う挨拶フレーズ
出社・退社時や、ちょっとした外出・戻りの際の挨拶も見ていきましょう。日本語とは少し感覚が違う表現もあります。
「行ってきます」「行ってらっしゃい」
日本語の「行ってきます」に直接相当する決まったフレーズはありません。行き先や状況を伝えるのが一般的です。
「行ってきます」側:
- Je vais chez le client X. (ジュ ヴェ シェ ル クリヨン イックス) – X社に行ってきます。
- Je vais déjeuner. (ジュ ヴェ デジュネ) – 昼食に行ってきます。
- J’y vais. (ジ ヴェ) – (そこに)行ってきます。(行き先が分かっている場合)
- Je m’en vais. (ジュ モン ヴェ) – もう行きます。(ここから立ち去るニュアンス)
- Je reviens (tout de suite). (ジュ ルヴィアン (トゥ ドゥ スュイット)) – (すぐに)戻ってきます。
別れの挨拶を添える:
- À tout à l’heure ! (ア トゥ タ ルール!) – また後で!(すぐに戻る場合)
- À plus tard ! (ア プリュ タール!) – また後で!(少し時間が空く場合)
- Bonne journée ! / Bon après-midi ! – 良い一日を! / 良い午後を!
見送る側の「行ってらっしゃい」も、状況に応じた返事をします。
「行ってらっしゃい」側:
- D’accord. À tout à l’heure ! (ダコー. ア トゥ タ ルール!) – わかった。また後でね!
- Bonne route ! (ボンヌ ルート!) – 道中気をつけて!(車で出かける人へ)
- Bon courage ! (ボン クラージュ!) – 頑張って!
- Bonne chance ! (ボンヌ シャーンス!) – 幸運を! / うまくいくといいね!
「ただいま」「おかえりなさい」
こちらも日本語のような決まった表現はありません。戻ってきたことを示す表現を使います。
「ただいま」側:
- (Bonjour,) me revoilà. ((ボンジュール,) ム ルヴォワラ) – (こんにちは、)戻りました。
- Je suis de retour. (ジュ スイ ドゥ ルトゥール) – 戻りました。
- 目が合った人に: Salut ! / Rebonjour ! (サリュ! / ルボンジュール!) – やあ! / 再びこんにちは!
- 単に自分の席に戻るだけでもOK。大きな声で全体に知らせる必要はあまりありません。
「Rebonjour」は「再びこんにちは」という意味で、同じ日に2回目に会った時に使えますが、3回目以降は「Salut」の方が自然です。
「おかえりなさい」側:
- Ah, te revoilà ! (アー, トゥ ルヴォワラ!) – ああ、戻ったんだね!
- Salut ! / Rebonjour !
- その後の会話:
- Ça a été ? (サ ア エテ?) – どうだった? / 大丈夫だった?
- Comment ça s’est passé ? (コマン サ セ パッセ?) – どうでしたか?
- Tout s’est bien passé ? (トゥ セ ビアン パッセ?) – 全て上手くいきましたか?
「失礼します」
日本語の「失礼します」は様々な場面で使われますが、フランス語では状況に応じて言い方が異なります。
- 退社時: 「Au revoir. (さようなら)」「Bonne soirée. (良い夜を)」「À demain. (また明日)」など。親しい同僚には「Salut.」。
- 部屋に入る時: 基本的に何も言わずに入ることが多いです。ノックして返事があれば「Oui ? (ウィ? – はい?)」と顔を出すか、「C’est Tanaka. (セ タナカ – 田中です)」と名乗る程度。誰かに呼ばれた場合は「Oui, j’arrive. (ウィ, ジャリーヴ – はい、行きます)」など。
- 相手の前を横切る時、少し邪魔をする時: 「Excusez-moi. (エクスキュゼ モワ) – すみません」や「Pardon. (パルドン) – ごめんなさい」。
- お茶を出す時など: 特に何も言わないのが普通です。もし言うなら「Voilà votre café. (ヴォワラ ヴォートル カフェ) – コーヒーどうぞ」のように、提供するものを示す言い方をします。
丁寧にお願い・質問する基本フレーズ
職場で何かを頼んだり、質問したりする際には、丁寧な表現を心がけることが大切です。以下の動詞の活用を覚えておくと便利です。
Pouvoir (〜できる、〜してもよい) を使う
自分が何かをしたい、許可を求めたい時に使います。
Est-ce que je peux + 不定詞 … ? (エスク ジュ プ …) – 〜してもいいですか? (標準的)
Puis-je + 不定詞 … ? (ピュイジュ …) – 〜してもよろしいでしょうか? (ややフォーマル、主に書き言葉)
Est-ce que je pourrais + 不定詞 … ? (エスク ジュ プレ …) – 〜させていただいてもよろしいでしょうか? (条件法を使った非常に丁寧な依頼)
例: Est-ce que je peux vous poser une question ? (質問してもいいですか?)
例: Est-ce que je pourrais emprunter ce stylo ? (このペンをお借りしてもよろしいでしょうか?)
相手に何かを依頼する場合にも使えます。
Pouvez-vous + 不定詞 … ? (プヴェ ヴ …) – ~していただけますか? (丁寧 – Vous)
Peux-tu + 不定詞 … ? (プ テュ …) – ~してくれる? (親しい – Tu)
Pourriez-vous + 不定詞 … ? (プリエ ヴ …) – ~していただけますでしょうか? (非常に丁寧 – Vous)
Pourrais-tu + 不定詞 … ? (プレ テュ …) – ~してくれるかな? (非常に丁寧 – Tu)
例: Pourriez-vous m’aider, s’il vous plaît ? (手伝っていただけますでしょうか?)
Vouloir (〜したい、〜してほしい) を使う
相手に何かを依頼する際に、「~してくれませんか?」という意味で使います。直接的な命令ではなく、相手の意志を尋ねる形になるため丁寧な依頼になります。
Voulez-vous + 不定詞 … ? (ヴレ ヴ …) – ~していただけませんか? (丁寧 – Vous)
Veux-tu + 不定詞 … ? (ヴ テュ …) – ~してくれない? (親しい – Tu)
Voudriez-vous + 不定詞 … ? (ヴドリエ ヴ …) – ~していただけませんでしょうか? (条件法を使った非常に丁寧な依頼)
Voudrais-tu + 不定詞 … ? (ヴドレ テュ …) – ~してくれないかな? (非常に丁寧 – Tu)
例: Voudriez-vous vérifier ce document, s’il vous plaît ? (この書類を確認していただけませんでしょうか?)
重要:依頼や質問をする際には、必ず「s’il vous plaît (スィル ヴ プレ) – お願いします(丁寧)」または「s’il te plaît (スィル トゥ プレ) – お願い(親しい)」を付け加えましょう。これがフランス語の丁寧さの基本です。
ビジネス基本用語と会話例
職場でよく使われる単語や、実際の会話例を見てみましょう。
よく使う職場・ビジネス用語
- 会社: entreprise (f), société (f)
- オフィス: bureau (m)
- 同僚: collègue (m/f)
- 上司: supérieur(e) (m/f), chef (m), patron(ne) (m/f)
- 部下: subordonné(e) (m/f)
- 会議: réunion (f)
- 報告書: rapport (m)
- メール: e-mail (m), courriel (m)
- 電話: téléphone (m), appel (m)
- アポイントメント: rendez-vous (m)
- プロジェクト: projet (m)
- 締め切り: date limite (f), délai (m)
- 顧客: client(e) (m/f)
- サプライヤー: fournisseur (m)
- 見積もり: devis (m)
- 請求書: facture (f)
- ファイル: fichier (m)
- 添付する: joindre
- カレンダー/予定表: calendrier (m), agenda (m)
- アンケート: questionnaire (m)
- ソフトウェア: logiciel (m)
- マーケティング部: service marketing (m)
- 営業部: service commercial (m) / ventes (f/pl)
- 人事部: ressources humaines (f/pl) (RH)
- 経理部: comptabilité (f) (compta)
実践会話:新しい職場でのオリエンテーション
場面:先輩社員のクレマンが、新しく加わったアントワーヌにオフィスを案内しています。
さあアントワーヌ、私たちのチームへようこそ!ここが君のデスクだよ。
ありがとう、クレマン。親切にどうも。
同僚とコミュニケーションするには、このチャットソフトウェアを使うんだ。知ってる?
いいえ、使ったことがありません。簡単に教えてもらえますか?
もちろんだよ。ここで宛先を選べる。で、ファイルを添付するには、このボタンだ。
わかりました、ありがとう!結構シンプルですね。
ああ。そうだ、イントラネットの共有カレンダーを見ておいて。次の会議の日程が載っているから。
完璧です、見ておきます。助かりました、どうもありがとう。

会議 (Réunion) やプレゼンでの表現も覚えよう
フランスの職場文化とコミュニケーションのコツ
フランスの職場で円滑な人間関係を築くためには、言葉だけでなく、文化的な背景やコミュニケーションのスタイルを理解することも重要です。
年齢や役職よりも個人主義?
- 年齢・年功序列はあまり関係ない: 日本ほど年齢や社歴が重視されることは少なく、実力や役割に基づいて評価される傾向があります。同僚であれば、年齢に関係なく対等な立場で接することが多いです。
- 「Tu」と「Vous」の使い分け: 同僚間では親しみを込めて「tu(君)」を使う職場が多いですが、会社やチームの文化、個人の関係性によります。最初は「vous(あなた)」で話しかけ、相手の様子を見たり、「On peut se tutoyer ? (オン プ ス テュトワイエ?) – tuで話してもいいですか?」と確認したりするのが無難です。上司に対しては基本的に「vous」を使います。
- 下の名前で呼び合う: 役職名(Monsieur le Directeurなど)で呼ぶのは非常にフォーマルな場面や階級がかなり離れている場合を除き、日常的には下の名前で呼び合うのが一般的です。これは上司に対しても同様の場合があります。周りの人の呼び方を参考にしましょう。
日本の常識は通用しない?働き方と考え方
- はっきり意見を言う文化: 議論を好み、自分の意見をはっきりと主張することが良しとされる文化です。遠慮して黙っているより、たとえ拙いフランス語でも自分の考えを述べることが期待されます。
- 残業は少ない傾向: 法定労働時間(週35時間)が定められており、基本的に残業は多くありません。時間内に仕事を終え、プライベートの時間を大切にする考え方が根付いています。「自分の仕事が終わったら他の人を手伝う」という文化も日本ほど強くありません。
- バカンスは神聖: 長期休暇(特に夏のバカンス)は非常に重要視され、しっかりと休みを取ります。休暇中の同僚に仕事の連絡をするのは避けましょう。
- Pause café (コーヒー休憩): 仕事の合間にコーヒーを飲みながら同僚と雑談する「pause café」は、重要な情報交換や人間関係構築の場でもあります。気軽に参加してみましょう。
- ストライキ (Grève): フランスでは労働者の権利意識が高く、ストライキが比較的頻繁に行われます。交通機関などに影響が出ることもあるため、情報をチェックすることが大切です。

Pause café はコミュニケーションのチャンス
コミュニケーションを円滑にするために
- はっきりと話す: 自信がなくても、相手に聞こえるようにはっきりと話すことが重要です。声が小さいと、話す意欲がない、あるいは何か隠していると誤解される可能性もあります。
- 分からないことは正直に聞く: 分かったふりをせず、「Pardon ? (パルドン? – 何ですか?)」「Pouvez-vous répéter, s’il vous plaît ? (プヴェ ヴ レペテ, スィル ヴ プレ? – 繰り返していただけますか?)」「Je n’ai pas bien compris. (ジュ ネ パ ビアン コンプリ – よく理解できませんでした)」など、正直に聞き返しましょう。
- 質問を恐れない: 疑問点があれば、遠慮せずに質問することが大切です。
- 非言語コミュニケーションも意識: 挨拶や会話ではアイコンタクトを心がけましょう。握手はビジネスシーンで重要です。ジェスチャーは、文化によって意味が異なる場合があるので注意が必要です。
- ユーモアとエスプリ: フランス人は会話の中にユーモアやエスプリ(機知)を交えることを好みます。完璧なフランス語でなくても、リラックスして会話を楽しむ姿勢が大切です。
まとめ:自信を持ってフランスの職場でコミュニケーション!
フランスの職場で円滑なコミュニケーションをとるためには、基本的な挨拶や丁寧な依頼表現を覚えることはもちろん、日本とは異なる文化や習慣、コミュニケーションスタイルを理解し、尊重する姿勢が非常に重要です。年齢や役職にとらわれすぎず、自分の意見をはっきりと伝え、分からないことは正直に聞く。そして、何よりも挨拶を大切にすること。
最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、積極的にコミュニケーションをとろうと努力する姿勢は、必ず相手に伝わります。この記事で紹介したフレーズやヒントを参考に、自信を持ってフランスの職場での新しい一歩を踏み出してくださいね! Bon courage !