フランス語で「よろしく」や「行ってきます」は何というの?日本で定番の挨拶はフランス語に訳しにくいものが多く、なんと言えばいいのか悩んでしまうことも。
今回は「よろしく」に代表される、フランス語に訳しにくい挨拶について、詳しくご紹介します。
フランス語で「よろしく」訳しにくい挨拶フレーズまとめ
目次
よろしくお願いします
日本ではごく普通に使っているのに、ぴったり表現できるフランス語がない…。そんな挨拶の代表格が「よろしくお願いします」です。
初めて会ったときの「よろしく」
例えば職場に初出勤して自己紹介する際、日本だと最後に「どうぞよろしくお願いします」と付け足すことが多いですよね。
フランス語で「お願いします」は「s’il vous plaît / s’il te plaît」ですが、これは何かをお願いした場合に使う「お願いします」で、上記のようなケースでは使うことができません。
ではフランス語で自己紹介や挨拶をしたとき、締めの言葉はなんと言うかといえば、何もなし。伝えたいことを言ってそれで終了、でOKです。
友人などを介して紹介してもらったあと、特に自己紹介などなく「よろしく」と一言だけ言いたい場合、フランス語では下記のように言うことができます。
Je suis enchanté(e) de vous / te connaître.
Je suis ravi(e) de faire votre / ta connaissance.
これはどちらも「あなたと知り合えてうれしいです」という意味です。
「connaître」は「知っている」という動詞。「connaissance」は「知り合い」という意味の名詞で「faire la connaissance de ○○」で「○○と知り合う」という意味になります。
どちらの文も少し長いので、覚えられるかなと不安であれば、「Enchanté(e) 」と一言だけでも大丈夫。実際にフランス人も「Enchanté(e) 」をよく使っています。
そして男性同士なら握手、男女や女性同士ならほっぺたを寄せ合う「bisou キス/ビズ」をしましょう。
フランス語で自己紹介する方法はこちらの記事で詳しく紹介しています。
お願いごとをしたときの「よろしく」
何かお願いした場合に、重ねて「よろしく」と伝えたい場合には、便利な決まり表現があります。
Merci d’avance.
(前もって)よろしくお願いします。
「merci ありがとう」に「d’avance 前もって」を付けた「Merci d’avance」は「前もってありがとう=よろしくお願いします」という意味。先にありがとうと言っておくからきちんとやってね、という感じでしょうか。
これは口語でも文章でもどちらでも使え、比較的カジュアルな表現です。口語の場合はシンプルに「Merci」だけでも問題ありません。
文章の場合は「Cordialement」が使われることも多く、「心から、誠意を込めて」という意味。日本語の「敬具」と同様に使うことができます。
日本語の「敬具」は「よろしく」と重ねて使うことも多いですが、フランス語の「Cordialement」は他の「よろしく」に該当する表現と重ねて使うことはしない点に注意しましょう。
例えば、日本人の感覚では「Merci d’avance」と「Cordialement」を重ねて使っても、「よろしく」と「敬具」のように、違う意味で解釈するので違和感がないかもしれませんね。
しかしフランス人的には、重ねて使われていると違和感があり、どちらか片方で十分だと感じるようです。
フランス語の手紙の書き方や締めの表現については、こちらの記事をご覧ください。
その場にいない人への「よろしく」
「よろしくお伝えください」という表現も良く使いますよね。この場合はフランス語にも決まり文句があるので簡単です。
Donnez le bonjour à ○○.
Dites / Dis bonjour à ○○.
〇〇さんにこんにちはと伝えてください。
どちらも「bonjour こんにちは」と伝えてください、という表現。これは時間帯によって変化はせず、夜だからといって「bonsoir こんばんは」や「bonne nuit おやすみなさい」を使うことはありません。
「à ○○」の部分には、名前の他に下記のような単語を入れることもできます。
- à votre / ta famille あなたの家族に
- à votre / ton enfant あなたの子どもに
- à votre / ton fis あなたの息子に
- à votre / ta fille あなたの娘に
- à votre / ton mari あなたの夫に
- à votre / ta femme あなたの妻に
- à tout le monde みんなに
親しい間柄では「bisou」を使って「よろしく」と伝えてもらうこともできますよ。
Tu fais bisou à ○○ de ma part.
○○に私の分のビズもしておいてね。
始まりの挨拶の「よろしく」
イベントや会議など、何かを始める前の挨拶でも「本日はよろしくお願いします」と「よろしく」を使いますよね。
しかしこの「よろしく」にもフランス語には決まり文句がなく、シチュエーションに合わせて、表現を使い分ける必要があります。
例えば会議などで話し始める前なら…
Je vous remercie pour votre silence.
お静かにお願いします。
Je vous remercie pour votre attention.
注目してください。
イベントなどを開始する挨拶なら…
Je vous remercie pour votre participation.
ご参加ありがとうございます。
開始前に待たせてしまった場合なら…
Je vous remercie pour votre patience.
お待ちいただきありがとうございます。
「Je vous remercie pour ~」は「私はあなたに〜について感謝します」という表現です。シンプルに「Merci pour ~」と言っても、同じ意味になります。
日本語の「よろしくお願いします」と意味は違いますが、「よろしくお願いします」と言いたい場面で代わりに使えることが多いので、覚えておくと便利ですよ。
また、始まりの挨拶としてではなく、締めの「ありがとうございました」の意味でも使えます。
例えば「Je vous remercie pour votre silence」は始まりの挨拶で使えば「お静かにお願いします」ですが、締めの挨拶で使えば「ご静聴ありがとうございました」の意味になります。
締めに使う場合は、日本語だと「ありがとうございました」と過去形になりますが、フランス語では「remercier 感謝する」を過去形にする必要はありません。
過去形にして「Je vous ai remercié ~」と言ってしまうと、「前にちゃんとありがとうって言ったじゃない」「前に○○するようにお願いしたのに」のように、何か不満があるというニュアンスになってしまうこともあるので、注意してくださいね。
仕事で使えるフランス語の挨拶
「お疲れさま」や「頑張ります」などは、仕事や学校で使うことも多い挨拶ですが、フランス語では何と言うのでしょうか。
お疲れさま
「お疲れさま」も日常でよく使う日本語ですね。しかしこれもフランス語に訳しにくい単語の一つ。
仕事帰りに「お疲れさまです、失礼します」という場合は、シンプルに別れの挨拶だけでOKです。
Au revoir, à demain.
さようなら、また明日。
Bonne soirée!
良い晩を(過ごしてください)!
仕事や勉強を頑張った人に対しての「お疲れさま」の場合は、状況次第で様々です。
「お疲れさま」は「Bon travail」と訳される場合もありますが、これは「良い仕事をしたね」という意味なので、日本語の「お疲れさま」のように使うことはできません。
例えばその日の仕事や勉強が終わったであろう人になら、「お疲れ様」の代わりに下記のように声をかけると良いでしょう。
Vous avez terminé ?
終わったの?
Vous avez terminé pour aujourd’hui?
今日は終わり?
相手の努力をたたえる意味での「お疲れさま」の場合は、このように言うことができます。
Vous avez fait beaucoup d’efforts.
あなたはとても努力しました。
J’admire votre effort.
あなたの努力を尊敬します
Vous avez bien travaillé.
良く働きましたね。
外出先から帰ってきた人への「お疲れさま」に該当するフランス語は特になく、「Salut」など軽い挨拶だけでOK。
仕事などを依頼していた人への感謝の気持ちを込めての「お疲れさま」もシンプルに「Merci ありがとう」など感謝の気持ちを伝えればOKです。
頑張る
努力するという意味の「頑張る」は下記のような表現が使えます。
Je fais un effort.
努力します。
Je fais de mon mieux.
ベストを尽くします。
Je vais tenir bon.
持ちこたえます。
相手に「努力してね、頑張ってね」という場合は「Bon courage!」ですね。他にも…
Je vous soutiens.
あなたを支えます/応援しています。
仕事などを依頼して、それをきちんと成し遂げて欲しいときの「頑張って」なら…
J’ai confiance en vous.
あなたを信頼しています。
Je compte sur vous.
あなたを当て(頼り)にしています。
「さあ、頑張ろう」など、自分に気合を入れるための「頑張る」や、「今日も頑張ってね」などの「頑張る」もフランス語に訳しにくい単語です。
「さあ頑張るぞ」と気合を入れる時には…
C’est partie!
さあ始まりだ!
Allez, on attaque!
さあ、取り掛かろう!
「今日も頑張ってね」なら「頑張る」という単語を使わずに、
Bonne journée!
良い一日を!
などと言う方が日本語のニュアンスに近くなります。
職場で使えるフランス語表現やコミュニケーションのコツは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
外出に関するフランス語の挨拶
「行ってきます」「行ってらっしゃい」など、日常的に多用する外出時の挨拶もフランス語に訳しにくく、何と言えば良いのか悩んでしまうものの一つ。とはいえ簡単なフランス語表現で代用できるので、ぜひ覚えてくださいね。
行ってきます
家を出る時や仕事中に出かける時など「行ってきます」という日本語は毎日よく使いますよね。ところがフランス語には、この「行ってきます」というような出かける時の決まり文句がありません。
出かける人がその場に残る人に使うフランス語の挨拶表現には、下記のようなものがあります。
J’y vais.
行きます / 出かけます。
Je sors à 〇〇.
〇〇へ行きます。
Je pars.
出発します。
À ce soir.
また今晩。
À tout à l’heure.
また後で。
À tout de suite.
また(すぐ)後で。
上記のフレーズを組み合わせて、下記のように言うのが一般的です。
J’y vais, à ce soir.
出かけるよ、また今晩ね。
このように、自分が出かけること、次いつ会うか(ce soir 今晩、tout à l’heure 後で)を伝えます。その後に親しい間柄なら「Bisou キス」を加えると良いでしょう。
行ってらっしゃい
「行ってらっしゃい」は「行ってきます」と比べて、更にしっくりくるフランス語表現がありません。
「À ce soir.」と言われたら「À ce soir.」と同じように返す。場合によっては「Fais attention. 気を付けてね」を加えるという感じです。
A: Je vais à la boulangerie. À tout de suite.
パン屋に行くよ、また後で。
B: Merci. À tout de suite.
ありがとう、また後で。
A: J’y vais.
出かけるよ。
B: Oui, comme il neige, tu fais bien attention pour la route.
うん。雪が降ってるから、道中気を付けてね。
A: Ne t’inquiètes pas. À ce soir.
心配しないで。また今晩ね。
B: À ce soir. Bisou.
また今晩ね。キス。
ただいま
帰ってきたとき日本なら「ただいま」ですが、フランス人はなんというのでしょうか?
Je suis là.
私はここにいます。
C’est moi.
私です。
Je suis de retour.
戻ってきました。
Salut.
やあ。
鍵を開けて入ってきて、家の中に向かって「Je suis là」「C’est moi.」と大きな声で言うイメージです。
仕事場に帰ってきたときなら、部屋に入りながら「Je suis de retour.」というと、日本の「ただ今戻りました」というニュアンスに近くなります。
おかえり
では帰ってきた人に「Je suis là」や「Salut」と挨拶された時には、何と答えれば良いでしょうか。
Ça a été ta journée?
良い一日だった?
Ça a été la réunion?
会議はどうだった?
というように「Ça a été 〇〇? 良い〇〇だった?」という表現が便利です。シンプルに「Ça a été?」だけでもOK。「良い一日だった?」「上手くいった?」という意味で使えます。
もちろん「Salut」と返すだけでも大丈夫です。
食事に関するフランス語の挨拶
日本では食事前後の挨拶は欠かせないもの。「いただきます」や「ごちそうさま」が言えないと、礼儀知らずと思われてしまうものです。フランスでも食事の挨拶は欠かせません。
いただきます
食事の前の「いただきます」という表現もフランスには訳しづらいのですが、代わりに「Bon appétit」という表現があります。
「bon 良い」「appétit 食欲」なので、「良い食欲を=沢山召し上がれ」という意味になり、自分以外の人に対して食事前に使うフレーズです。
日本語に訳した場合は「召し上がれ」になるので、料理を作った人やお金を払う人が使うフレーズのように感じてしまいますね。
しかしフランスでは、調理したかや支払いに関係なく、食事の前に「Bon appétit」と言い合う文化があります。自分が食事を提供する側ではない場合でも、自分から「Bon appétit」と言っても、もちろんOK。
「いただきます」の食事に感謝するというニュアンスとは違いますが、周りの人と「Bon appétit」と言い合ってから食事をスタートさせましょう。
そしてレストランなどでサービスの人に「Bon appétit」と言われた場合は、「Merci 」と返してくださいね。
また、「Bon appétit」は相手に対して言う表現なので、自分一人で食事するときは時に何も言わずに食事を始めることになります。
召し上がれ
「いただきます」と言われたら、料理を作った人は「召し上がれ」と返しますよね。ところがフランスでは「いただきます」と「召し上がれ」、どちらにも「Bon appétit」を使います。
自分が作った料理でも、他の人が作った料理でも、「Bon appétit」と言うようにしましょう。
ちなみにフランスの家庭では、大皿料理をテーブルで各自のお皿に盛るのが一般的です。そんな時に「召し上がれ」の代わりに使えるフランス語はこちら。食事をスタートする合図にもなります。
Est-ce que je vous sers?
(料理をあなたのお皿に)盛りましょうか?
Servez-vous.
自分で(料理をお皿に)盛ってくださいね。
ごちそうさまでした
フランスで食後に「ごちそうさまでした」と言いたいときは何といえばよいのでしょうか。
食事を作ってもらった人が作ってくれた人にお礼を伝えたり、食事に招待された場合に使える表現はこちらです。
Merci pour ce repas.
この食事をありがとう。
C’était très bon.
とても美味しかったです。
上記の表現は食事を作った人が使うものではないので、作った人は食後に「ごちそうさまでした」というような締めの言葉を言うことはありません。
レストランなどに招待してもらった場合の「ごちそうさま」には…
Merci pour l’invitation.
ご招待をありがとう / ごちそうしてくれてありがとう。
「invitation」は「招待」という意味ですが、「奢ってくれた」というというときにも使えますよ。
「ごちそうさま」というときには、どう美味しかったかも同時に伝えたいですよね。食事の美味しさのフランス語表現は、こちらの記事をチェックしてください。
お粗末さまでした
日本では食後の「ごちそうさまでした」に「お粗末さまでした」と返事をすることもありますが、謙遜なんてしないフランス人ですから、こんな表現もありません。
食事に対するお礼の言葉を言われた場合は、下記のように返事をすると良いでしょう。
Avec plaisir.
どういたしまして。
Ça a été?
大丈夫だった?
Ça te plaît?
気に入った?
Tu as bien mangé?
たくさん食べた?
まとめ
「行ってきます」や「ただいま」「いただきます」など、日本人の日常生活に欠かせない挨拶。ぴったり該当するフランス語の単語がないとなると、困ってしまいますよね。特定の表現が無くても、何か言わないと気持ちが悪いという人もいることでしょう。
そんな時は日本の表現にとらわれず、フランス人が使っているような表現をどんどん取り入れてしまうのがおすすめです!何度も繰り返し口に出すことで、ニュアンスや使い時が自然と理解できるようになりますよ。