軟水に慣れている日本人には、フランスの硬水が身体に合わないことも。お腹の調子が悪くならないためには、ミネラルウォーターの選び方も重要なんですよ。
今回はフランスのレストランで水を注文する方法や、無料の水が欲しいときの伝え方を紹介します。
フランス語で水を注文しよう!無料の水の頼み方も解説
フランスの水の種類
フランスで水を注文するためには、水の種類を覚えておく必要があります。まずは、ガス無し・ガス有り、軟水や硬水など、基本的な種類を確認していきましょう。
ガス無し水:Eau plate
「ガス無しの水」は「eau plate」。「eau」は「水」、「plate」は「平らな」という意味です。
そして水道水に軟水と硬水があるように、ボトル入りの「eau plate」にも軟水と硬水があります。
軟水:Eau douce
好みにもよりますが、日本人の私たちに飲みやすいのは軟水の方ですよね。
フランス語で「軟水」は「eau douce」といい、「douce」は「doux」の女性形で「やわらかい」という意味。「eau douce」には「eau de mer 海水」に対しての「真水・淡水」という意味もあります。
硬水の水道水が多いフランスでは、赤ちゃんの粉ミルクを溶かすのにもボトル入りの「eau douce」を使う人が多いようです。
代表的なブランドは、Evian・Volvic・Vittel など。どれも日本でも売られていますよね。
旅行中などでお腹の調子を壊すのが心配なら、水の成分表をじっくり眺めてみましょう。「Calcium カルシウム」の欄に書かれている数字を目安に、できるだけ低い物を選ぶと安心です。
ちなみにフランスで売られている水で低い物では一桁台、Volvic で11.5、Evian で78となっています。
硬水:Eau dure
対して「硬水」は「eau dure」。「dure」は「固い、きつい」という意味です。
例えば「eau plate」の中でも、Contrex は「Calcium」が486とかなり大目=かなりの「eau dure」です。ダイエットに良いイメージで、飲んでみたことがある方もいるのでは?初めて飲むと、水に味があることにびっくりしてしまいますよね。
フランス人は「eau dure」の味に慣れているせいか、カルシウムやマグネシウム補給のために好んで「eau dure」を選ぶ人も多いようです。
ただし「eau dure」にお腹が慣れていない人は、花子さんのようにお腹がゆるくなることもあるので、旅行中はできるなら避けた方が良いでしょう。
ガス入り水:Eau gazeuse
「ガス入り水 / 炭酸水」は「eau gazeuse」。「gazeuse」は「気体の、炭酸ガスを含んだ」という意味。「pétillant パチパチはねる、起泡性の」を使った「eau pétiante」という表現もあります。
Perrier は日本でも有名ですね。他にも Badoit やイタリア産の San Pellegrino もフランスで人気の「eau gazeuse」です。
ところでこの「eau gazeuse」は大きく2つに分けられます。まず Perrier に代表される「naturellement gazeuse」、つまり「自然に炭酸ガスが含まれている天然水」です。
この「naturellement gazeuse」の水の種類は少なく、ほとんどの炭酸水は「eau gazéifiées」、つまり「ガスの入っていない水に後からガスを添加した物」が売られています。
【Eau gazeuseはどうして人気?】
「eau gazeuse」は「eau dure」なので独特の味がありますが、炭酸の作用で飲みやすいのが特徴です。
胃の動きを活発にしてくれるから、フランス料理のように少し重い料理でもすっきりと食べることができるんですね。
お水をください!レストランで注文する方法
今日の花子さんはマリーさんとレストランに来ています。食事の注文が終わった後、花子さんはお水を注文しているようですね。
会話
Hanako : Excusez-moi, je peux avoir une bouteille d’eau, s’il vous plaît.
すみません、お水のボトルをお願いできますか。
Serveur : Oui Madame, de l’eau plate ou de l’eau gazeuse ?
ウエイター:はい、マダム、ガス無しですか、ガス有りですか?
Hanako : Qu’est-ce que vous avez comme eau plate ?
ガス無しでは何がありますか?
Serveur : Nous avons de l’Evian et du Volvic.
エヴィアンとボルヴィックがあります。
Hanako : Une bouteille d’Evian, s’il vous plaît.
ボルヴィックをお願いします。
Marie : Tu commandes toujours une bouteille d’eau ?
いつも水のボトルを注文するの?
Hanako : Oui, en fait, quand je bois de l’eau dure, après, j’ai souvent un petit problème de ventre…
ええ、あのね、硬水を飲むと、後でお腹の調子が悪くなることが多いのよ。
Marie : Il me semble qu’au Japon, l’eau est douce partout.
日本ってどこも軟水なんだっけ?
Hanako : Tout a fait.
その通り。
Je crois que mes intestins n’arrivent pas à digérer de l’eau dure.
多分私の腸が硬水を受け付け得ないんだと思うわ。
Marie : Dans ce cas, tu ne peux pas demander une carafe d’eau à Paris !
じゃあ、カラフ入りの水なんて、パリではお願いできないわね!
ポイント
Je peux avoir ~?
直訳すると「私は~を持つことができますか?」と、とっても変な文になってしまいますね。これはお店などで「~をください」の意味で使われます。
意味としては「Je voudrais ~」と同じですが、フランス人はお店で何かをお願いするときには「Je peux avoir ~?」をよく使うので、覚えておきたい表現です。
「Je voudrais ~」は柔らかくお願いする表現ですが、「Je peux avoir ~?」のほうが、更に柔らかい印象を与えることができます。
塩が欲しいなら「Je peux avoir du sel, s’il vous plaît.」、今飲んでいるビールやワインと同じ物をもう一杯欲しいなら「Je peux avoir un autre, s’il vous plaît.」と言ってみましょう。
Qu’est-ce que vous avez comme ~?
「~としては何がありますか?」という意味ですが、ここでも「avoir」が使われています。
「comme」は「~のように」という意味でよく使われる単語ですが、ここでは「~として」という意味で使われています。「comme」の後ろの単語は冠詞が付かない点にも注意してください。
花子さんはこの表現を使って、ガス無しの水の種類に何があるかについて質問していますね。
Qu’est-ce que vous avez comme eau plate ?
ガス無しでは何がありますか?
何があるかではなく、特定の物があるか質問したいときにも「vous avez ~ ~を持っている」を使うことができます。
Est-ce que vous avez de l’eau plate ?
ガス無しの水はありますか?
「Qu’est-ce que vous avez comme ~?」はレストランでの注文以外でも、お店などで店員さんにどんな物があるのか尋ねたいときに便利なフレーズです。
Qu’est-ce que vous avez comme couleur?
どんな色がありますか?
Qu’est-ce que vous avez comme taille?
どんなサイズがありますか?
「何がありますか?」には「Qu’est-ce qu’il y a ~?」という表現もありますね。レストランの注文などで、こちらを使っても間違いではありません。
しかしフランス人は「vous avez ~?」の表現を好む傾向があるので、こちらを使った方がこなれた印象を与えることができますよ。
Nous avons ~
「Qu’est-ce que vous avez comme ~?」に対しては、「Nous avons ~」「(私たちは)~があります」という答え方になります。
ここでも「il y a ~ ~がある」とは言わないのが、日本語との違いを感じて面白いですね。
無料の水を注文する方法
日本では基本的に水は無料なので、フランスでも有料の水を注文したくないという方も多いですよね。ボトル入りの水は高いので、フランス人でも注文しない人はたくさんいます。
日本風に無料のお水が欲しいときは…
Je voudrais avoir une carafe d’eau, s’il vous plaît.
ピッチャー入りのお水をください。
このようにお願いすると、ピッチャーに入れた水道水を持ってきてくれますよ。
「carafe」とは「ピッチャー、水差し」のことですが、ワインボトルが再利用されていたりと、一見しただけでは水に見えないこともあります。
フランスでは基本的に「carafe d’eau」はお願いしなければ持ってきてくれないので、注文時に同時にお願いするとスムーズです。
ただ基本は「eau dure」(地方によっては eau douce の場合もあり)なので、お腹の敏感な方は諦めたほうがよいかもしれませんね。
ちなみに「De l’eau, s’il vous plaît. 水をください」と言っても無料の水を持ってきてもらえます。
しかし「De l’eau 水」ではどんな水かをきちんと指定していないので、悪質なお店の場合は有料の水を持ってこられる危険があります。
最初から「Une carafe d’eau」と言う方がトラブルを避けられるので、きちんと覚えておくと安心ですよ。
【お願いしなくても提供されることがある】
基本的に無料の水はお願いしなければ提供されないことはお伝えした通りですが、お願いしなくても「carafe d’eau」を提供してくれるお店も増えています。
最初からテーブルに置いてあることもありますし、注文が終わった後に持ってきてくれることもあります。
パリの有名なカフェの中には、カフェを頼むと「un verre d’eau コップ一杯の水」が添えられてくるところもあるので、わざわざお願いしなくてもいいのはありがたいですね。
フランスで水を頼むときの注意点
フランスのレストランやカフェで水を頼むとき、うっかりしていると、無料の水を頼んだつもりが有料の水を注文したと思われることがあります。
水が要るか聞かれたときの答え方
レストランで料理やワインを注文した後、水が要るか聞かれることがあります。
Est-ce que vous voulez de l’eau?
水は要りますか?
「Oui はい」と答えると、今度はどんな水が良いか聞かれることでしょう。
De l’eau plate ou de l’eau gazeuse ?
ガス無しですか、ガス有りですか?
こんな風に聞かれた場合は、有料のボトル入りの水のことです。もちろん有料の水を注文するつもりなら問題ないのですが、無料の水が良いときは一瞬どう答えるべきか悩んでしまうかもしれません。
有料の水の前提で話を進められると、無料の水をくださいと言いにくい気もしますが…。そんな時も堂々と「Une carafe d’eau, s’il vous plaît.」と無料の水をお願いしましょう。
無料の水をお願いするのは、フランス人でも普通のこと。通常は嫌な顔をされることもありません。
まれに嫌な顔をされることもありますが、それは単にその店員が感じが悪いだけ。あなたが無料の水を頼んだから馬鹿にされているのではありません。
【高級レストランの場合】
とはいえ高級レストランでは「Une carafe d’eau」を頼みにくいもの。特にワインなど他の飲み物も頼まないのであれば、ボトル入りの水を注文する方がスマートではあります。
有料の水を注文すべきと考えるかは価値観によって違いますが、高級店で何もドリンクを頼まないのはマナー違反だと考える人が多いのが実際のところ。周りのテーブルを見渡してみて、他の人に合わせるのが良いかもしれませんね。
濾過水を有料で提供している店がある
フランスでは「écologie 自然環境保護」の観点から、ボトル入りの水の消費を減らそうという社会的な流れがあります。
レストランやカフェでも、ボトル入りの水を提供せず、フィルターを通した水道水を「carafe」に入れて有料で提供する店が増えてきているようです。
「eau filtrée」と書いてあれば、濾過した水道水のこと。「filtré」は「濾過した」という意味です。
「eau filtrée」にも「eau plate」と、それに炭酸を添加した「eau gazesese」があります。
「eau filtrée」を提供しているお店では、無料の「carafe d’eau」を頼んだつもりが実は有料だった、なんてことにもなりかねません。一つ目の「carafe d’eau」は無料でも、二つ目からは有料というお店もあります。
有料の「eau filtrée」の値段は、メニューのわかりやすいところに記載されていることが殆どなので、きちんとチェックするようにしてくださいね。
【絶対に有料の水を注文したくないなら】
「eau filtrée」はボトル入りの水に比べると安いのですが、それでも日本人の感覚だと、フィルターを通しただけの水にお金を払いたくないと感じるかもしれません。
どうしても無料の水が良い場合は下記のように伝えてみましょう。
Je voudrais une carafe d’eau non filtrée.
濾過されていないピッチャー入りの水をください。
「eau filtrée」を有料で提供しているお店なら、「non filtrée 濾過されていない水=水道水」となるため、無料の水を提供してもらえることでしょう。
ちなみに「水道水」は「eau de robinet」といいます。「robinet」は「蛇口」のことです。
ダイレクト過ぎて実際には口にしにくい表現ですが、絶対に有料はイヤだ、というときには下記のように言うこともできます。
Je voudrais une carafe d’eau non payante.
無料の水をください。
「non payante」 は「無料の」という意味。ここまではっきり言えば、有料の水が出てくることはありませんし、お会計の時に揉めることもなくなるでしょう(少しイヤな顔をされる可能性はありますが…)。
水のピッチャーは汚く見えることがある
無料の「carafe d’eau」の中身は「eau dure」の「eau du robinet」、つまり「calcaire 石灰」の量が多いことがほとんどです。
「eau dure」は乾燥すると「calcaire」がうっすらと白く残ってしまうため、お店で提供される「carafe」も、白っぽく薄汚く見えることがあります。
特に安いレストランやカフェでは、水が入っていただけの「carafe」をキレイに洗って拭きあげる事はしません。そのため、どんどん「calcaire」が蓄積されていってしまうのです。
汚く見えても水の成分が残っているだけで、本当に汚いわけではないので、汚いから代えてください、と文句を言わないようにしてくださいね。
「calcaire」ではなく、水に何かが混入しているなど、本当に汚い場合はもちろん交換をお願いしましょう。
Pouvez-vous changer la carafe d’eau, s’il vous plaît, il y a quelque chose dedans.
水のピッチャーを変えて頂けますか。中に何かが入っています。
フランスの水は常温が基本
無料にしろ、有料にしろ、フランスの水は常温で提供されることがほとんどです。ましてや氷を出してくれることもありません。
有料の水の場合は冷えていることもありますが、それなりに高いお店でも常温なこともあると覚えておきましょう。
とはいえ、暑い日にはしっかり冷えたお水が飲みたいものです。そんなときは有料の水を注文した後に、冷えているか聞いてみましょう。
Est-ce qu’elle est fraîche?
水は冷えていますか?
逆に常温の水のほうがいいなと思う日もありますよね。そんなときは…
Est ce que vous avez une bouteille tiède?
常温のボトルはありますか?
ちなみに、食事タイムに注文する大きな水のボトルではなく、アペリティフ用やカフェで頼むような小さな水のボトルは、しっかりと冷やされています。
ジュースなどの冷たいドリンクと同じ扱いになるため、氷も提供されることもあります。
まとめ
フランスのレストランやカフェで水を注文する方法を紹介しました。
私たち日本人にとっては、席に着いたら無料の水が出てくるのが当たり前なこと。わざわざ水を頼まないといけなかったり、うっかりすると有料の水が出てきたりと、面倒ではありますが、いくつかのフランス語を覚えておけば、お店で困ることもなくなります!
お腹が丈夫な人は旅行中でも無料の水で問題ありませんが、不安な人はボトル入りの軟水を注文するようにしてくださいね。