日本語では兄弟といいますが、フランス語では「frère」といいます。では兄や弟と区別したいときや、姉妹もいる場合にはなんといえば良いのでしょうか?
今回は兄弟や姉妹の呼び方や、血の繋がりによる呼び方の違いなどを詳しく紹介します。
frère「兄弟」フランス語の呼び方
フランス語の「兄弟」の呼び方
日本語での日常会話では、兄弟というと姉や妹も含めることも多いですが、フランス語では兄弟や姉妹の性別は日常会話でも厳密に区別されています。
まずは兄弟や姉妹を意味するフランス語の単語を確認していきましょう。
le frère 兄・弟
「le frère」は「兄」もしくは「弟」のこと。読み方は「frεːr フレール」です。
自分より年が上か下かには関係なく、男の兄弟ならば「le frère」といいます。呼び方に違いが無いのは、日本ほど年上か年下かにこだわらない文化のためかもしれませんね。
J’ai un frère.
兄(もしくは弟)が(一人)いる。
J’ai des frères.
兄弟(複数人。兄か弟かは分からない)がいる。
はっきりと兄か弟かを区別したいときは「grand 大きい」「petit 小さい」を頭につけましょう。
- grand frère 兄
- petit frère 弟
J’ai un grand frère.
兄が(一人)いる。
J’ai un petit frère.
弟が(一人)いる。
la sœur 姉・妹
「la sœur」は「姉」もしくは「妹」のこと。読み方は「sœːr スール」です。
「le frère」と同様に年の上下は関係ないため、姉といいたいなら「grande」、妹といいたいなら「petite」を付けましょう。
- grande sœur 姉
- petite sœur 妹
J’ai une grande sœur.
姉が(一人)いる。
J’ai une petite sœur.
妹が(一人)いる。
兄弟や姉妹が複数人いる場合
日本語で兄弟の数を聞かれたら、一般的には兄弟か姉妹かを区別して答えないことが多いかと思います。わざわざ「兄弟~人に姉妹が~人」と性別を分けては言わないですよね。
ところがフランス語だと、上記でお伝えしたように兄弟と姉妹は必ず区別して表現します。
A : Tu as combien de frères et de sœurs?
兄弟や姉妹は何人いるの?
B : J’ai un frère et une sœur.
兄(もしくは弟)が一人と姉(もしくは妹)が1人いるよ。
もちろん「grand」や「petit」を付けて、年の上下を伝えても構いません。
兄弟が多い場合は、合計何人いるかや、自分が何番目の子供かも付け加えてもいいかもしれませんね。
J’ai un grand frère et deux petites sœurs.
兄が1人と妹が2人いるよ。
On est quatre enfants en tout.
合計で(子供が)4人いる。
Je suis le deuxième enfant.
私は2人目の子供だよ。
【「○人目」のフランス語表現】
一人目だけ男性と女性で語尾が変化しますが、それ以外は冠詞を変えるだけでOK。男性の場合は「le」、女性の場合は「la」を付けましょう。
- 1人目 le premier / la première
- 2人目 le deuxième / la deuxième
- 3人目 le troisième / la troisième
- 4番目 le quatrième / la quatrième
- 5番目 le cinquième / la cinquième
フランス語の数字の数え方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
兄弟の順番に関するフランス語
長男や長女・末っ子など、兄弟のなかでも一番上と下には特別な呼び方があるように、フランス語にも特別な呼び方があります。
aîné 年長の
「aîné(e)」は形容詞で「(最)年長の」という意味です。「frère aîné 一番上の兄」「sœur aînée 一番上の姉」というように使います。
「一番上の」と訳すと兄や姉が複数いるときにしか使えないような気がしてしまいますが、兄や姉が一人しかいない場合でも使える表現です。
「grand frère」などはどちらかというと砕けた呼び方ですので、場合によって「aîné」と表現を使い分けられると良いですね。
Je vous présente Jacques, il est mon frère ainé.
(あなたに)ジャックを紹介します。彼は私の一番上の兄です / 兄です。
この「aîné」は「fils 息子」や「fille 娘」につけると、長男・長女の意味になります。
cadet 年少の
「cadet(te)」は「aîné」の反対で「年下の・末子」を意味します。
J’ai un frère cadet / une sœur cadette.
弟 / 妹が1人います。
Je suis le cadet / la cadette.
私は末っ子です。
兄弟の血の繋がりに関するフランス語
兄弟や姉妹といっても、親が同じとは限らないのがフランスの家庭事情。離婚や再婚をするカップルの多いフランスでは、兄弟の父親や母親が全て同じではないことも珍しくありません。
片方の親が違ったり、親の再婚相手の連れ子というケースも多くみられます。
le demi-frère / la demi-sœur
母親は同じで父親が違う、など半分血のつながった兄弟・姉妹は「demi- 半分の」を頭に付けて表現します。この「demi」は不変化なので、姉妹の場合に「demie」と「e」を付けてしまわないように注意しましょう。
- le demi-frère 半分血のつながった兄弟
- la demi-sœur 半分血のつながった姉妹
J’ai un demi-frère. On a le même père.
半分だけ血のつながった兄弟が(一人)います。父親が同じです。
フランスでは離婚や再婚が多く、この「le demi-frère」や「la demi-sœur」がいるのは全く珍しくありません。
半分血のつながった兄弟というと、なんとなくギクシャクした関係を想像してしまうかもしれませんね。
しかしフランスの子供は、離婚した親の間を行き来して生活しているため、「le demi-frère」や「la demi-sœur」とも生まれたときから交流があり、ほとんどの場合は、普通の兄弟と同じような関係性を築いています。
le beau-frère / la belle-sœur
義理の兄弟の場合は「beau- / belle- 義理の」を付けて表します。
- le beau-frère 義理の兄弟
- la belle-sœur 義理の姉妹
この「le beau-frère」や「la belle-sœur」は、配偶者の兄弟や姉妹に対して使われることがほとんどです。
お互いに子供がいて一緒に暮らしてはいても、親同士が結婚していないことも多いのがフランス。そのため、そもそも親の恋人の子供を「義理の兄弟」というのに違和感を感じることも。
そんなときは…
Il est le fils de la femme de mon père.
彼は父の妻の息子だ。
Elle est la fille du mari de ma mère.
彼女は母の夫の娘だ。
日本語に訳してしまうと、相手との距離を感じさせる表現ですが、フランス語では特に違和感も距離感も感じさせる表現ではありません。
フランスには離婚や再婚によるステップファミリーも多いですし、そもそも子供がいても結婚しない選択をし、次の恋人と一緒に住み始めても、結婚という形をとらないカップルも少なくありません。
親同士が別れても子供の親権はどちらも持つことになるため、親が再婚したとしてもその相手はあくまで「 la femme de mon père 父の配偶者」「le mari de ma mère 母の配偶者」でしかない存在です。
自分の親は別にいるため、彼らを「la belle-mère 義理の母」や「le beau-père 義理の父」と認識することもありません。そのため彼らの子供も、義理とはいえ兄弟だと認識しないのかもしれませんね。
フランスの義理の家族の呼び方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
【親同士が結婚していない場合】
ちなみに親同士が結婚していない場合は、「femme 妻」「mari 夫」の代わりに「conjoint」を使うことができます。
「conjoint」は法的には「(結婚している)配偶者」の事ですが、日常生活では結婚していないパートナーに対しても使うことがあります。「partenaire パートナー」といってもいいですね。
Il est le fils du conjoint / partenaire de mon père.
彼は父のパートナーの息子だ。
フランスの結婚や家族事情について知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。
le frère adoptif / la sœur adoptive
「adoptif / adoptive」は「養子縁組による」という意味。フランスでは子供を養子縁組によって迎えるカップルも多いため、血の繋がらない兄弟や姉妹がいることもあります。
- le frère adoptif (親の養子縁組による)兄弟
- la sœur adoptive (親の養子縁組による)姉妹
日本との違いは、再婚相手の子供を養子縁組するケースが少ないという点(日本でも養子縁組しないこともありますが)。
親が離婚しても子供の親であることに変わりはなく、親と子供との関わりがなくなることは無いため、親の配偶者が法律上の親になることは基本的にありません。
つまり親の配偶者の子供が、自分の法律上の兄弟や姉妹になることはとても少なく、「frère adoptif」や「sœur adoptive」がいるならば、孤児などを親が養子縁組したケースが主に考えられます。
兄弟以外の家族に関するフランス語
兄弟や姉妹に関する呼び方を覚えたところで、それ以外の家族に関するフランス語も覚えておきましょう。
- famille 家族
- parent / parents 親 / 両親
- père 父
- mère 母
- enfant 子供
- fils 息子
- fille 娘
- grand-parents 祖父母
- grand-père 祖父
- grande-mère 祖母
- petit-entant 孫
- petit-fils 孫息子
- petite-fille 孫娘
- oncle 伯父・叔父
- tante 伯母・叔母
- neveu 甥
- nièce 姪
- cousin / cousine 従兄弟・従姉妹
【parent / parents】
「parent」は「親」のことですが、「両親」は「parents」と複数形を使います。特に「片親」だと明確にしたいときには、「isolé 孤立した、単独の」を使い「parant isolé」といいましょう。
【oncle / tante】
日本では自分の親の兄と姉は伯父と伯母、弟と妹は叔父と叔母と使い分けますが、フランス語では親の兄弟は「oncle」、親の姉妹は「tante]です。「frère」や「sœur」と同じで、生まれた順による呼び方の違いはありません。
ちなみに「oncle」の愛称は「tonton」、「tante」の愛称は「tantan」です。
【cousin / cousine】
「cousin」は「従兄弟」、「cousine」は「従姉妹」。単語自体が違うわけではなく、女性形の「e」が付くかの違いだけですが、「frère」や「sœur」と同じく、男女まとめて「cousin」というのはNG。それぞれ適した単語を使う必要があります。
J’ai un cousin et une cousine.
従兄弟1人と従姉妹1人います。
フランス語会話:兄弟は何人?
最後に兄弟に関するフランス語を、実際の会話で確認していきましょう。
会話
花子さんがマリーさんに、兄弟について尋ねています。
Hanako : Tu as combien de frères et de sœurs?
ご兄弟はいらっしゃる?
Marie : J’ai un grand-frère et une petite sœur.
兄と妹がいるわよ。
Hanako : C’est bien ça.
いいわね。
Moi, comme je suis enfant unique, je rêvais d’en avoir quand j’étais petite.
私は一人っ子だから、小さいときには兄弟が欲しかったのよ。
Combien d’enfants ils ont?
彼らに子供は何人いるの?
Marie : Alors, d’abord côté mon frère, il a deux enfants, une fille et un garçon.
ええっと、まず兄のほうは、2人いるわ。女の子と男の子よ。
Hanako : Ils ont quel âge ?
歳はいくつ?
Marie : La fille a douze ans, le garçon a dix ans.
女の子は12歳、男の子は10歳よ。
Hanako : Ah, ils sont déjà assez grands !
あら、けっこう大きいのね。
Marie : Et côté ma sœur, c’est un peu plus compliqué…
で、妹の方はちょっとややこしいのよ…
Hanako : Ah bon, pourquoi ?
あら、どうして?
Marie : Elle en est à son deuxième mariage, et son mari l’est aussi.
彼女、2度目の結婚なんだけど、彼女の夫もそうなのよ。
Donc elle a une fille issue de son ancien mariage, une autre avec le mari actuel.
それで、彼女には前の結婚の時の女の子が1人、今の夫との間にもう1人女の子がいるわ。
Et il a une fille et un fils avec son ex-femme.
それに、彼(妹の夫)には前の奥さんとの間に娘と息子が1人ずついるわ。
Hanako : Ça fait quatre enfants en tout.
合計4人になるのね。
Ils habitent tous ensemble ?
全員、一緒に住んでいるの?
Marie : Les deux filles de ma sœur, oui, sauf le week-end et les vacances.
彼女の2人の娘は一緒に住んでいるわ。週末とヴァカンスを除いてね。
L’aînée passe la moitié des congés chez son père.
最初の子は休みの半分を彼女の父親のところで過ごすの。
Hanako : Et les enfants de son mari ?
じゃあ、旦那さんの子供達は?
Marie : C’est le contraire pour eux.
彼らは反対ね。
C’est la moitié de leurs congés qu’ils passent chez ma sœur.
彼らの休みの半分を私の妹のところで過ごしているわ。
Hanako : Ça doit être compliqué de tout organiser…
(休みの)段取りを立てるのは難しそうね…
Marie : Oui, mais ce n’est pas tout.
そのとおり。でも、それだけじゃないの。
Son ex-mari a aussi des enfants issus du nouveau mariage.
彼女の元夫にも新しい結婚でできた子供がいるの。
Donc mes nièces ont deux demi-frères aussi.
つまり、私の姪っ子達には、半分血のつながった兄弟も2人いるのよ。
ポイント
côté
「le côté」は「側」という意味ですが、ここでは「côté mon frère」で、「私の兄(弟)に関しては」という意味で使われています。
これは話し言葉でよく使われますが「côté」が無冠詞なのに注意してください。冠詞が付いて「le côté mon frère」というと、「私の兄(弟)の方(血筋)」と違う意味になってしまいます。
Côté travail, ça se passe très bien, mais la vie privée …
仕事に関してはとても上手くいってるよ、でもプライベートの方はね…
J’ai deux oncles du côté maternel.
母方の叔父が2人います。
ちなみに「côté」には良く似た表記で「cote 相場」や「côte 肋骨」、「coté 相場をつけられた」などがあるので、アクセントにも注意しましょう。
son mari l’est aussi
ここでの「l’」は中性代名詞の「le」ですが、前文の「Elle en est à son deuxième mariage」を受けています。
つまり、「son mari est aussi à son deuxième mariage」ということですね。
この「le」は女性形や複数形でも不変化です。
A : Vous êtes japonaise ?
あなたは日本人(女性)ですか?
B : Oui, je le suis.
はい、そうです。
まとめ
フランス語の兄弟や姉妹の呼び方について紹介しました。年齢の上下にこだわらないフランス人の気質が、こんな単語にも現れていることが分かり、興味深いですよね。
日本語と違って兄弟も姉妹もまとめて「frère」と表現できないのが少し面倒ですが…。
兄弟以外にも家族に関する単語も覚えておくと、そこから話が広がるきっかけが見つかりますよ。