フランスのお給料の平均や最低賃金は?額面も気になりますが、それよりも手取り額の方が知りたいですよね。
今回はそんなフランスのお給料について覗いてみましょう。
フランスの給料は平均いくら?額面と手取りの違いもチェック!
目次
フランスの給料はいくら?
フランス語でお給料は「salaire」。まずはフランスの「salaire」の額について見ていきましょう。
平均と中央値
- salaire moyen 平均給与
- salaire médian 給与の中央値
「salaire moyen」は全ての「salaire」の合計を労働者の数で割った数字、「salaire médian」は給与所得者のちょうど真ん中に位置する人の「salaire」の数字です。
給料の平均
「Insee フランス国立統計経済研究所」によると、2022年のフルタイム勤務の平均給料は「secter privé 民間企業」で手取り2,630ユーロとのことです。
日本円だと420,800円(1ユーロ=160円で計算)。日本の「salaire moyen」が414,000円とのことなので、ほぼ同じくらいだといえるでしょう。
男女別や立場による給与の平均はこちら。
- homme(男性) 2,790ユーロ
- femme(女性) 2,400ユーロ
- cadre(管理職) 4,490ユーロ
- professions intermédiaires(中級職)2,570ユーロ
- employé(事務員)1,880ユーロ
- ouvrier(労働者、工員)1,940ユーロ
「fonction publique 公職」の2021年の平均給与は2,430ユーロ。民間企業の統計とは一年の差がありますが、200ユーロ低いという結果になっています。
- homme 2,620ユーロ
- femme 2,330ユーロ
- fonctionnaire(公務員)2,500ユーロ
- Non-fonctionnaire(公務員以外)1,990ユーロ
- Personnel médical(医療従事者)6,220ユーロ
給料の中央値
2021年の「salaire médian」を比較してみましょう。
- secter privé 2,010ユーロ
- fonction publique 2,180ユーロ
「secter privé」の「salaire médian」は2,010ユーロ、日本円だと321,600円です。日本の「salaire médian」は360,000円なので、フランスの方が約40,000円ほど少なくなっています。
フランスの「salaire moyen」は「secter privé」の方が高いのですが、「salaire médian」では逆転して「fonction publique」の方が高くなっていますね。
これは「salaire moyen」は一部の高額な給与のせいで数字が大きくなってしまうから。対して「salaire médian」はちょうど真ん中の給与の数字なので、給与の実態を知りたい場合は、こちらの数字を見る方が確実です。
職業別の給料
2024年の代表的な「profession 職業」の「salaire médian」はこちら。
- avocat(弁護士)3,887ユーロ
- coiffeur(美容師)1,900ユーロ
- chef de sushis(寿司職人)2,241ユーロ
- cuisinier(料理人)1,900ユーロ
- banquier(銀行員)3,910ユーロ
- infirmier(看護師)2,459ユーロ
- pâtissier(パティシエ)1,950ユーロ
- pharmacien(薬剤師)3,750ユーロ
- policier(警察官)2,763ユーロ
- pompier(消防士)1,971ユーロ
- professeur(教師)3,223ユーロ
- puériculteur(保育士)2,544ユーロ
- soignant(介護士)1,952ユーロ
- serveur(ウェイター) 1,851ユーロ
参照:talent.com
ちなみにフランスの「président 大統領」であるエマニュアル・マクロン氏の給料は月額16,039ユーロだとか。「député 国会議員」は7,493ユーロです。
最低賃金「Smic」
フランス語で最低賃金は「Smic」。「salaire minimum de croissance」の略で、「スミック」と読みます。
- salaire 給料
- minimum 最小、最低
- croissance 成長、発展
「croissance」の名の通り、インフレーション共に金額が増える仕組みになっています。
2024年11月より「Smic」の金額は額面で…
- Smic horaire(時給)11.88ユーロ
- Smic mensuel(月給)1,801.80ユーロ
- Smic annuel(年給)21,621.60ユーロ
11.88ユーロは約1,900円(1ユーロ160円で計算)なので、日本の最低賃金が1000円前後のことを考えるとほぼ二倍。とても高いように感じますよね。
しかしフランスは物価も高いため、実際のところ「Smic」で生活するのはなかなかに厳しいものです。
そしてフランスでは17.3%が「Smic」であり、かつ「Smic」で働いている人の数は年々増加しています。
月給の「salaire médian」が2,010ユーロだとお伝えしましたが、「Smic」とはたったの200ユーロしか変わりません。
最低賃金である「Smic」と中央値である「salaire médian」の間の人が国民の50%もいることを考えると、フランス人の半数は最低賃金に近い安い給料で働いているといえるでしょう。
参照:statista
【アルバイトの給料】
留学やワーホリでフランスに来て、アルバイトをしたいと思っている方もいるでしょう。
フランスでアルバイトは「petit boulot」と呼ばれますが、学生が行うような単純な短時間労働のイメージです。
さてそんな「petit boulot」の給料は、ほとんどが「Smic」と思うのが正解です。もちろん何かスキルがあればその限りではありませんが、比較的簡単に仕事が見つかるレストランなどでは、「Smic」以上の仕事を見つけるのは難しいでしょう。
フランス人の学生の間でポピュラーな仕事に「garde d’enfant ベビーシッター」があり、これも「Smic」が基本です。しかし実際は個人間のやり取りが多いため、それ以下で依頼を受けることも多いようです。
フランスの給料の額面と手取り
ここまでフランスの給料額についてお伝えしましたが、働くとなると額面と手取りの仕組みもしっかりと覚えておく必要があります。
額面と手取り
- 額面「brut」
フランス語で給料の額面は「salaire brut」といいます。税金や年金・健康保険料なども全て含んだ、会社が支払う金額のことですね。
「brut」は「元のままの、自然のままの」という意味と、「(税金などを含めた)総計の」「(包装などの重さを込めた)総重量」という意味があります。
- 手取り「net」
フランス語で給料の手取り額のことを「salaire net」といい、さまざまな控除をされた後に、実際に受け取れる金額のことです。
「net」は「はっきりした」という意味の他に、「正味の」という意味があります。
【給料以外のbrutとnet】
「brut」と「net」は、お給料以外のところでも日常的に使われる単語です。
例えばオリーブなどの瓶詰の「poids brut」はオリーブと漬け汁の重さ、「poids net」は汁なしのオリーブのみの重さのこと。
商品の値段で「prix brut」は税金を含まない金額、「prix net」は税込みの金額のことです。
いずれにせよ重要になってくるのは「net」であることがほとんどなので、表記しているのがどちらなのかをきちんと確認するようにしたいですね。
フランスの手取り額
フランスの「offre d’emploi 求人」には「brut」の金額が書かれていますし、アルバイト的な短時間の仕事でも社会保障などの天引きがあるため、「offre d’emploi」の金額=「net」ということがありません。
日本のアルバイトなら何も天引きされないこともあるため、同じ感覚で「offre d’emploi」を見ていると、「net」の金額を知ってガッカリしてしまうこともあるでしょう。
例えば上記で紹介した「Smic」の「net」は下記のようになっています。
- Smic horaire 9.4ユーロ
- Smic mensuel 1,426.30ユーロ
- Smic annuel 17,115.69ユーロ
フランスの所得税
日本で手取りというと所得税も控除済みの数字を指しますが、フランスの「net」は、社会保障や年金などは引かれていますが、日本と違い「impôt sur revenu 所得税」が引かれる前の金額です。
つまり「net」ではあるが、「net d’impôt 税金控除済み」ではないということ。紛らわしいですよね。もちろん「impôt sur revenu」のかからない収入額であれば、「net」の金額がそのまま手取り額になりますが…。
これは、フランスの「impôt sur revenu」が永らく「prélèvement à la source 源泉徴収」ではなかったのが原因です。
2019年より「prélèvement à la source」が導入されましたが、それ以降も変わらず「impôt sur revenu」が引かれる前の金額が「net」扱いのまま。
そのため給料明細には「brut」と「net」、さらに「impôt sur revenu」が控除された本当の手取り額が記載されるという形になっています。
フランスの所得税についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
フランスの例外的な給料
日曜日に働いた場合
フランスは日曜日はお休み!というこだわりが強く、お店やレストランもほとんど開いていませんでしたが、日曜日に営業する店が増えてきています。
そんなフランスで日曜に働いた場合の給料ですが、臨時で働く場合はなんと二倍!日常的に日曜日も働いている場合は20%から30%が給料に加算されます。
ストライキした場合
フランスは「grève ストライキ」が多く、特に公共交通機関での「grève」で旅行中に困った経験をした方もいるのではないでしょうか。
時には「そんなに続けてお給料は大丈夫なの?」と思ってしまうほど長く続くことも…。
フランスでも「grève」をしたら、その時間は働いていないということなので、当然その時間分は給料から引かれてしまいます。一時間だけ「grève」をした場合は、一時間分だけ引かれるシステムです。
国家公務員の場合は数時間の「grève」でも1/30の給料が引かれ、地方公務員の場合は「grève」をした時間に対する割合で引かれるようになっています。
じゃあ、何週間も「grève」をしている場合は生活できなくなるのでは?と思いますよね。
ところが最終的に合意するときに、何かしら「grève」中の金銭的損失をカバーする条件が盛り込まれることもあるとのこと。
もしくは労働組合が組合費から「gréviste ストライキ参加者」に支払いをすることもあるようです。
だから、長い期間「grève」が続いてしまうんですね。
ボーナス
フランス語でボーナスは「intéressement 利益分配」といいます。「bonus ボーナス」という単語もあるのですが、「intéressement」の方を使うのが一般的です。
日本では夏と冬に「intéressement」が出ることも多いですよね。月給の何ヵ月分も支給される会社もあり、「intéressement」ありきの支出計画を立てることも少なくありません。
対してフランスでは、日本のような「intéressement」は一般的ではなく、役員には「intéressement」がでますが、それ以外には「intéressement」がないところが多いようです。
代わりに「trezieme mois 13ヵ月目」という手当がでることもありますが、その名が示す通り13ヵ月目の給料=1ヵ月分の給料の上乗せであり、何ヵ月分もの手当が出ることはありません。
しかし「intéressement」のように業績によっては支給されないということはなく、雇用契約時にも明記されているため、必ず支給される手当です。
そして会社や仕事内容によっては「prime 特別手当」が支給される場合もあります。
フランスの貧困と裕福の境目
月にいくら稼げば裕福なのか、そしていくら以下なら貧困になるのか。フランスで仕事をするなら、自分の収入がどのカテゴリーに当てはまるのかも気になりますよね。
フランスの貧困の定義は生活水準の中央値の60%で、2022年ではなんと19.3%が当てはまるようです。
Inseeによる2022年の月収ラインは下記のようになっています。
貧困ライン | 庶民 | 中間層 | ゆとり層 | 富裕層 | |
一人 | 1,014€ | 1014~1,608€ | 1,608~2,941€ | 2,941~4,055€ | 4,055€~ |
親一人+14歳以下の子一人 | 1,318€ | 1,318~2,091€ | 2,091~3,823€ | 3,823~5,272€ | 5,272€~ |
カップル | 1,521€ | 1,521~2,413€ | 2,413~4,411€ | 4,411~6083€ | 6,083€~ |
カップル+14歳以下の子一人 | 1,825€ | 1,825~2,895€ | 2,895~5,294€ | 5,294~7,299€ | 7,299€ |
カップル+14歳以下の子二人 | 2,534€ | 2,534~4,021€ | 4,201~7,352€ | 7,352~10,138€ | 10,138€ |
カップル+子供三人(14歳以下を一人含む) | 2,839€ | 2,839~4,503€ | 4,503~8,234€ | 8,234~11,354€ | 11,354€ |
「Smic」の手取り月収が1,426.30ユーロなので、一人暮らしであれば庶民のカテゴリーですね。
カップルの二人共が「Smic」を稼いでいれば2,852.6€で、中間層になります。
「salaire médian 給料の中央値」は2,010ユーロでしたね。14歳以下の子供が二人いる家庭では、親が二人とも「salaire médian」を稼いでいても、中間層ではなくぎりぎり庶民という結果に。
カップルに子供二人というのはごく一般的な家族構成ですが、「salaire médian」を稼いでいても中間層に届かないということは、それだけ「salaire médian」が低いということなのでしょうか…。
フランス語会話:額面?それとも手取り?
最後に給料についてのフランス語会話をみていきましょう。
花子さんは気になる求人のお給料について、マリーさんに意見を聞いているようです。
Hanako: Regarde, cette offre d’emploi. Mille neuf cents euros pour ce travail, c’est pas mal?
見て、この求人。この仕事で1900ユーロって悪くないわよね?
Marie: Ça dépend si c’est du net ou du brut.
額面か手取りか次第だわ。
Si c’est du brut, c’est à peine au Smic.
額面なら、ほとんどSmicだもの。
Hanako: Je crois que ce n’est pas indiqué.
(どちらか)書いていないみたいだわ。
Marie: Dans ce cas, c’est du brut. Le salaire net est à peu près de mille cinq cent à mille six cent euros.
それなら、額面でしょうね。手取りのお給料は大体1500から1600ユーロよ。
Hanako: Est-ce qu’il est net d’impôt?
それは税金も払った後の金額?
Marie: Malheureusement, non. L’impôt sur revenu est prélevé automatiquement avant le versement, si on est imposable.
残念ながら違うのよ。課税対象の人なら、所得税が支払の前に自動的に引かれるわ。
【ポイント】
à peine
「à peine~」は「ほとんど~ない、かろうじて~だ」という意味。文中では「Smicよりは多いけれど、ほとんど変わらない」という意味でつかわれています。
net de ~
「net de ~」は「~のない、~を免除された、~を取り除いた」という意味。
文中の「net d’impôt」は「impôt 税金」が引かれた後の金額かどうか、を尋ねています
まとめ
フランスの給料についてお伝えしました。日本円に換算するととても良い給料のような気がしますが、実際のところ物価が高いフランスでは生活が厳しいと感じている人は多い模様。
実際にフランスで仕事を探す際には、物価や家賃などを鑑みて、本当に生活できるかをしっかり考えてくださいね。
※2024年11月の情報です。