フランスで体調不良になり病院ヘ行く…そんなときのためにも、フランスの医療システムや、症状を伝えるフランス語を知っておきたいものですよね。
そこで今回は、フランスのかかりつけ医制度や受診料、体調不良に関するフランス語を紹介します。
目次
フランスの医療システム
まずはフランスの医療システムや受診料について紹介します。
かかりつけ医制度
フランスはかかりつけ医制度であるため、体調不良になったらまずは「médecin traitant 主治医」に行くのが一般的です。
「médecin traitant」は日本の一般開業医にあたる「médecin généraliste 一般医」にお願いすることが多いですが、「médecin spécialiste 専門医」や「médecin hospitalier 病院勤務医」になってもらうこともできます。
まずは「médecin traitant」に診察をしてもらい、「médicament 薬」だけでなく、必要であれば「examen 検査」や「médecin spécialiste」の「ordonnance 処方箋」を出してもらうシステムです。
そのため一つの症状のために、「médecin traitant」→「examen」→「médecin traitant」→「médecin spécialiste」のように、何日にもまたがって、何度も医療機関に足を運ばなくてはいけないこともあります。
【処方箋なしの薬】
ちなみにフランスでも大衆薬は処方箋なしでも購入することができます。
病院に行くほどでもないかな…というときは「pharmacie 薬局」へ行って、「pharmacien(-enne) 薬剤師」に相談するという方法もあります。

フランスの医者は予約制
日本では予約なしでも診察してくれる「médecin」も多いですが、フランスでは基本的に予約制で、待てば診て貰えるわけではありません。
予約の電話も午前中だけしか受け付けていないことも多く、しかも当日の予約が取れるのはまずないと思った方がいいでしょう。
しかしどうしても当日に見てほしいほどの体調不良の時は、緊急性を訴えれば予約をねじ込んでもらえることもあります(救急に電話をするよう言われることも多いそうですが…)。
【予約がとれない場合】
「médecin traitant」の予約がとれない場合は、他の「médecin généraliste」に診察してもらっても大丈夫です。
とはいえ、他の「médecin」も予約がいっぱいなため、空きを探すのも一苦労なのがフランスの困ったところ。
そんなときは「Doctolib」というサイトで予約枠が空いている「médecin」を探すこともできます。
「médecin généraliste」だけでなく、採血やレントゲンなどの予約もできるので、「examen」の「ordonnance」が出された場合にも便利ですよ。
それでも見つからないときは、薬局で「téléconsultation ビデオ診察」を受けることもできます。当日でも空きがあることが多いので、お医者さんが見つからないけど救急に行くほどではない…というときにおすすめです。
医者の予約のとり方はこちらの記事で紹介しています。
【救急に行くには】
フランスの救急の電話番号は「15」。直接行くのではなく、まず「15」に電話をする必要があります。
直接行っても受け付けてくれず、一度「15」に電話するようにと言われることもあるようなので、必ず電話するようにしてくださいね。
フランスの受診料と健康保険
フランスの「médecin」はセクター1~3に分かれており、それぞれ受診料が違います。
- セクター1:健康保険の対象
- セクター2:一部健康保険の対象、一部自由診療
- セクター3:自由診療
セクター1は国によって受診料が決められている「médecin」で、健康保険の返金の対象です。
セクター2・3の自由診療は返金対象にならず、また料金もセクター1よりも高く設定されているため、事前に受診料の確認をしておくことをおすすめします。
日本語が通じる病院として有名なパリのアメリカンホスピタルは、セクター2・3の「médecin」が多いため、基本的に高額になると思っておいた方が良いでしょう。
【セクター1の受診料】
- médecin généraliste:30 euros
- médecin spécialiste:39 euros
セクター1を受診した場合、その70%が「Assurance maladie 健康保険」から、残りが「mutuelle 共済組合」から返金されますが、そこから2ユーロが引かれる仕組みになっています。
【médecin généralisteの返金額】
- Assurance maladie:30€×70%-2€=19€
- mutuelle:30€×(100%-70%)=9€
- 返金額合計:28€
受診料が30€の場合、「mutuelle」に加入していれば合計の返金が28€。つまり自己負担額はなんとたったの2€です。フランスは医療費が安いといわれる理由がよくわかりますね。
ただし、「médecin traitant」を決めないまま「médecin généralist」を受診した場合や、直接「médecin spécialiste」を受診した場合の返金額は30%になってしまいます。
フランスで「Assurance maladie」に加入しているなら、「médecin traitant」になってくれる「médecin」を探すようにしましょう。
【直接行ける専門医】
例外として「médecin traitant」を通さずに受診しても、払戻額に影響がない下記のような専門医もあります。
- gynécologue 婦人科医
- ophtalmologue 眼科医
- psychiatre 精神科医(16~25歳の場合)
- neuropsychiatre 神経精神科医(16~25歳の場合)
- stomatologue 口腔医
他にも「médecin traitant」はいるけれど予約がとれない場合や、バカンス先で病気になった場合などは受診した「médecin」にその旨を伝えれば、通常どおり返金されるので心配しないでくださいね。

病院で役立つフランス語
ここからは、実際に医療機関を受診したときに役立つフランス語表現を学んでいきます。
フランス語会話
風邪と咳、体調不良の代名詞ともいえる2つのケースに関するフランス語会話を見ていきましょう。
風邪をひいた場合
風邪をひいて医者にかかっている場面で、「熱がある」「咳、くしゃみ、鼻水が出る」「関節が痛む」など、風邪特有の症状を説明しています。
Médecin:Asseyez-vous, je vous en prie.
医者:どうぞ、お掛けください。
Alors…qu’est-ce qui ne va pas?
さて、どうしましたか?
Patient:J’ai 38,7 de fièvre depuis hier.
患者:昨日から熱が38度7分あります。
Je tousse beaucoup, j’éternue et mon nez coule.
咳がひどくて、くしゃみと鼻水も出ます
Médecin:Vous avez des courbatures?
関節の痛みはありますか?
Patient:Oui, un peu.
はい、少し
Médecin:Bien,on va voir ça. Ouvrez la bouche, s’il vous plaît…
分かりました。診てみましょう。口を開けてください。
Retirez votre chemise s’il vous plaît, je vais vous examiner.
聴診しますからシャツを脱いでください。
Inspirez fort… soufflez par la bouche maintenant.
息を大きく吸ってください…では口から吐いてください。はい、結構です。
Vous avez un bon rhume.
風邪ですね。
Vous prendrez des médicaments : deux cachets d’aspirine trois fois par jour et des gouttes à mettre dans le nez quand il est bouché.
薬を飲んでください。アスピリン2錠を一日3回、それから鼻が通らないときのために点鼻薬を出しておきます。
Voici votre ordonnance.
こちらが処方箋です。
Patient:Merci Docteur. Au revoir.
どうもありがとうございました。
- fièvre(f.):熱
- depuis hier:昨日から
- tousser:咳をする
- éternuer:くしゃみをする
- mon nez coule:鼻水が出る
- courbature:関節の痛み、こわばり
- inspirer:息を吸う
- souffler:息を吐く
- rhume(m.):風邪
- médicament(m.):薬
- cachet d’aspirine(m.):アスピリン錠
- gouttes à mettre dans le nez(f.):点鼻薬
- bouché(e):詰まった
- ordonnance (f.):処方箋
こちらは「un bon rhume (症状の重く出た)風邪」、つまりインフルエンザ「grippe」や肺炎「pneumonie」の心配はないですね、という診断でした。
咳がひどい場合
Patient:J’ai très mal à la gorge depuis hier. J’ai toussé toute la nuit.
患者:昨日から喉がとても痛くて、一晩中咳が止まりませんでした。
Je viens de passer une nuit blanche et je suis presque sans voix ce matin.
一睡もできず、今朝になったらほとんど声が出なくなりました。
Médecin:Est-ce que vous avez de la fièvre?
医者:熱はありますか?
Patient:Non. Ma température est normale, ou seulement un peu plus élevée que la normale.
いいえ、熱は平熱か、平熱よりほんの少し高い程度です。
Médecin:Je vais écouter vos poumons, attention,c’est peut-être froid.
肺の音を聞きましょう、ちょっと冷たいですよ。
Bon, on va vous donner un sirop pour la toux, des pastilles pour la gorge, et de l’aspirine.
はい、結構です。咳止めシロップと喉のためのトローチ、アスピリンを出しておきます。
Et si vous ne vous sentez pas mieux dans les deux ou trois jours, revenez me consulter.
2〜3日で良くならない場合はまたいらしてください。
- gorge(f.):喉
- tousser:咳をする
- toute la nuit:一晩中
- passer une nuit blanche:一晩中眠らず過ごす、徹夜する
- fièvre(f.):熱
- température(f.):体温
- élevé(e):高い
- poumons(m.):肺
- sirop(m.):シロップ剤
- toux(m.):咳
- pastille(f.):トローチ錠
- se sentir mieux:状態が良くなる
- consulter:~に相談する、受診する
どんな咳なのかを説明するには下記のように言うことができます。
- une toux grasse 痰の絡む咳
- une toux sèche 乾いた咳

体調不良を伝えるフランス語
体調不良で病院にいくときは、症状をできるだけ明確に説明するのが大切ですね。
病院で風邪の症状を少し詳しく説明したり、風邪に似た症状に関するフランス語の表現を紹介します。
症状を伝える表現
「~の症状がある」は「avoir +冠詞付きの名詞」で表現します。
J’ai de la fiévre.
熱がある。
J’ai de la courbatures.
関節が痛い(関節の痛みがある)。
J’ai des frissons.
悪寒がする。
J’ai la diarrhée.
下痢をしている。
痛みを伝える表現
「~が痛い」は「avoir mal +定冠詞つきの体の部分」で表します。
J’ai mal à la tête.
頭が痛い。
J’ai mal à la gorge.
喉が痛い。
J’ai mal au ventre.
お腹が痛い。
J’ai mal à l’estomac.
胃が痛い。
「気持ちが悪い」というときも「avoir mal ~」で表現します。
J’ai mal au cœur.
気持ちが悪い。
「cœur」は「心臓」のことですが、一般的に「J’ai mal au cœur」は吐き気がある状態を指します。
心臓が痛いときには「douleur 痛み」を使って表現すると、吐き気ではないことが明確に伝えられますよ。
J’ai des douleurs au cœur.
心臓が痛い。
朝と夜で症状が違う場合
「passer une nuit blanche」というのは、「一晩中眠らずに過ごす、徹夜する」という意味の表現です。ここまでひどい咳となると辛いものですね。
昼と夜では症状が違う場合、例えば「Je ne tousse pas beaucoup la journée, mais la nuit ça devient douloureux. 昼間はあまり咳が出ないが、夜になるとひどくなります」ということもあるでしょう。
「la journée / la nuit」でそれぞれ「昼に」「夜に」という副詞的な意味になります。

怪我をしたときのフランス語
怪我や急病で一刻も早く病院へ連れて行ってほしい…できればそんな状況にはなりたくないものですが、万が一のためにそんなときに必要なフランス語の表現を紹介します。
救急車を呼んでもらう方法
A:Voulez-vous appeler une ambulance s’il vous plaît?
救急車を呼んでください。
B: Qu’est-ce qui vous est arrivé?
どうしたのですか?
A:Je me suis fait mal au bras en tombant dans les escaliers.
階段から落ちて腕を痛めました。
B:Je téléphone tout de suite.
すぐに電話します。
- ambulance(f.):救急車
- se faire mal à ~:~を痛める
- bras(m.):腕
- en tombant dans les escaliers:階段で転んで
- tout de suite:すぐに
救急車を呼んでほしいときは、例文の言い方のほかに「Une ambulance, s’il vous plaît!」と言うだけでも大丈夫です。
また、「Voulez-vous m’emmener à l’hôpital? 病院に連れていって下さい」という表現も覚えておくとよいですね。
救急車を呼ぶ必要があるか「Il faut qu’on appelle une ambulance?」と聞かれて「その必要はありません」と断るときは「Non,ce n’est pas la peine.」です。
怪我をした状況を伝えるフランス語
怪我で病院に行ったら、どんな状況でどこを傷めたのかを説明する必要があるでしょう。
怪我をした経緯を伝えるには、例文のように原因や状況を説明する「en+現在分詞」のジェロンディフが使えます。
Je me suis cassé(e) la jambe en tombant dans les escaliers.
階段から落ちて脚を折りました。
- se casser la jambe …脚の骨を折る
単に「et」でつないだり、「~で(手などを)怪我した」というような場合は前置詞「avec」でも原因の意味を表すことができます。
J’ai trébuché sur une marche et je suis tombé(e).
階段を踏み外して落ちました。
Je me suis coupé(e) avec un éclat de verre / un couteau.
ガラスの破片で/ ナイフで切ってしまいました。
- trébucher :つまづく、よろける
- marche(m.):階段のステップ、段差
- se couper:体の一部を切る
- éclat de verre (m.):ガラスの破片
- couteau(m.):ナイフ
留学保険や海外旅行保険の手続き
留学保険や海外旅行保険に加入している場合で、フランスで病院に行った後に保険の支払を受けるためは請求書や診断書が必要です。
A:Voici ma police d’assurance.Pouvez-vous remplir ce formulaire?
私の保険証書です。この用紙(保険金請求書)に記入していただけますか。
Et voudriez-vous m’écrire un certificat médical, s’il vous plaît?
それから診断書を書いていただきたいのですが。
B:Oui, bien sûr.
はい、もちろんです。
- police d’assurance (f.):保険証書
- formulaire(m.):(書式の決まった)用紙
- certificat médical(m.):診断書
「Pouvez-vous ~ ? / Voudriez-vous ~?」はどちらも「~してくださいますか」という丁寧な依頼の表現です。
ちなみにフランスでは救急車も有料ですから、保険には必ず入っておきたいですね。
まとめ
フランスの医療システムは日本と違い不便なことも多いですが、フランスにいる限りは文句を言ってもどうしようもありません。
医療費が安いという大きなメリットもあるので、フランスで生活をするなら、かかりつけ医を見つけて適切に受診してくださいね。
※2025年3月の情報です