上品できれいなイメージがあるフランス語ですが、フランス語にも下品な言葉や悪態・スラングは存在します。
前回の「Putain」に続き、真似すべきではないフランス語のNGワードを覗いてみましょう。
真似しないで!フランス人がよく口にするNGワード&下品なスラング
目次
フランス語の下品なNGワード
フランス語で「下品な言葉」は「gros mot」。「gros」は「太った、大きな」という意味ですが「下品な」という意味もあります。「mot」は「言葉」です。
フランス人が口にすることが多い「gros mot」にはどんなものがあるのでしょうか。
Merde
「putain」と同じくらいポピュラーな「gros mot」がこの「merde」。そもそも排泄物の「糞」を意味し、悪態をつくときに「くそっ、ちくしょう」の意味でよく使われる単語です。
自分が何か失敗したときや上手くできないときにも「Merde! 」、人に対して苛立ちを表すのにも「Merde! 」、渋滞に巻き込まれたときも「Merde! 」、嫌なことに直面したときにも「Merde! 」…。
男性だけでなく女性にも使う人が多いフランス語のNGワードです。
Merde! Mais ça va pas!
くそ!上手くいかない!
物事が上手くいかないときや、失敗している自分に対して使われることが多い表現です。
「ça va pas」は正しくは「ça ne va pas 大丈夫ではない、上手くいかない」ですが、日常会話では「ne ~ pas」の否定文の「ne」が省略されることが多々あります。特にNGワードを使うような場面では「ne」はまず発音されることはないでしょう。
Merde! Tu m’enerves!
くそっ!あんたにはイライラさせられる!
Merde! Mais qu’est-ce que tu fais!
くそっ!何やってるんだ!
このように、「merde」は人に対して使われることもあります。特に感情が高ぶっているときには、普段「gros mot」を使わないフランス人でも、人に対してふっと口に出してしまうこともあるでしょう。
Merde! Avance!
くそっ!進めよ!
運転中には口が悪くなる人も多いですよね。渋滞で車が進まないときにも、するっと独り言のように「Merde!」が口から滑り出てしまうフランス人は多いようです。
Merde! Mais qu’est-ce que c’est que ça?
くそっ!なにこれ?
何か気に入らない状況を目の目にしたときに「なにこれ?」と言うこともありますよね。そんなときにもフランス人は、まるで間投詞のように「Merde!」を付けてしまうことでしょう。
【putain と merde の違い】
「putain」は「Putain, c’est bon! うわっ、めちゃ美味しい!」のように良い意味でつかわれることもありますが、「merde」は良い意味での間投詞として使われることはほぼありません。
「merde」が良い意味で使われるのは相手の幸運を祈るとき。「Bonne chance 幸運を祈る」と同じ意味でつかわれます。
Je te dis Merde !
幸運を祈ってるよ!
フランス語の「putain」については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
【Putain de merde !】
フランス語の2大「gros mot」である「putain」と「merde」が一緒になったのが「Putain de merde !」。
「putain」と「merde」のどちらか片方でも十分な悪態なのですが、悪態の最上級ともいえる表現です。
残念ながらフランス人の口から飛び出すことも多いですが、真似はしないようにしましょう。

Emmerder
「emmerder」は「うんざりする、困らせる」という意味。単語の中に「merde」が入っていることからも分かるように、こちらも「gros mot」の一つです。
「putain」と「merde」のように独り言の悪態として使うことは無く、うんざりする原因の人や物に対して使います。
Tu m’emmerdes.
(小言を言われたり困らされて)うるさい / うんざりだ。
Ça m’emmerde.
(上手くいかない状況や物事に対して)うんざりだ。
Faire chier
「chier」は「糞をする」という意味。「faire chier」は直訳だと「糞をさせる」ですが、「emmerder」と同様に「困らせる、うんざりさせる」という意味で使われます。
何か嫌なことや困ったことが起きたときに、独り言の悪態として「fait chier」と口にしますが、これは「Tu me fais chier / Ça me fait chier うんざりだ」が短縮された形です。
省略されていますが、うんざりさせる原因は主語の「Tu 君」や「Ça これ」、うんざりさせられるのは「me 私を」となっています。
【Chiant / Chiante】
「Chiant / Chiante」は「chier」から派生した形容詞。「うんざりさせる、退屈だ、面倒だ」という意味で、もちろん下品なNGワードです。
C’est chiant.C’est très compliqué!
何て面倒なんだ、複雑すぎる!
Tu es chiant.
あんた、うざい。
Bordel
「putain」の本来の意味は「売春婦」ですが、こちら「bordel」は「売春宿」のこと。「putain」と同様に、「くそ、ちくしょう」と悪態として使われます。
また「部屋が汚い」「混沌とした状況」などに対して「C’est le bordel ごちゃごちゃだ」ということもありますが、「”売春宿のように”ごちゃごちゃ」という意味になります。
ごちゃごちゃだと言いたいときには、中東の市場・バザールを意味する「bazar」を使って「C’est le bazar」という方が良いでしょう。
Con
「Con / Conne」は「馬鹿者」という意味で使われますが、そもそも「con」は「女性器」を表す単語で、とても侮蔑の意味合いが強い単語です。
気軽に「Tu es con (conne) 君はバカだ」「C’est con (やりかたや状況が)ばからしい」と口にするフランス人も多いですが…
日本語で女性器の名称を口にするのをためらう感覚があるなら、絶対に真似しないでくださいね。
バカだといい時は、同じように「バカな、愚かな」を意味する 「bête」「idiot(e)」「stupide」を使うようにしましょう。
【Connard / Connasse】
「Connard / Connasse」は「Con / Conne」から発生している単語で、「バカな男 / バカな女」という意味です。
「Con / Conne」とはちがい、主語や述語を伴わずに単語だけで「Connard!」「Connasse!」と吐き捨てるように口にされることがほとんどです。
こちらもとても侮蔑の意味合いが強いので、口にしないでくださいね。
Fils de pute
「pute」は「putain」と同じく「売春婦」のこと。「fils」は「息子」なので直訳だと「fils de pute」は「売春婦の息子」。男性に対して使われる「insulte 侮辱」の表現の一つです。
相手に直接言うと、殴られても仕方がないくらいの「insulte」なので、他の「gros mot」よりは耳にする機会がすくないですが、ヒートアップしたケンカなどでは使われることがあります。

Salaud / Salope
こちらもかなり汚い罵り言葉で、「Salaud 汚い男、下劣な男」「Salope 汚い女、あばずれ女」という意味です。
あまりにも汚い言葉なので、日常生活で耳にすることはないかもしれませんが…。強い憎しみや侮蔑が込められる単語なので、そういった場合には使うこともあります。
Il a battu sa femme. C’est un vrai salaud.
彼は奥さんを殴った。本当に下劣な男だ。
そして時には、ナンパして失敗したときの捨て台詞として、男性が女性に対して「Salope」と言うこともあります。
とても残念なことですし腹が立ちますが、さらに絡まれないためにも、無視して素早く立ち去るようにしてくださいね。
Espèce de ~
「Espèce de ~」は「一種の~」という意味ですが、後ろに侮蔑の言葉を付けると「~のやつめ!」といういNGワードになります。
Espèce de con.
Espèce de crétin.
バカなやつめ。
「con」は「馬鹿者」という意味でしたね。「crétin」も同じく「ばか」という意味の話し言葉です。ゲームのキャラクターの「Lapins Crétins ラパン・クレタン(ばかなうさぎたち)」で単語を耳にした方もいるかもしれません。
Ta gueule
「gueule」とは「動物や魚の口」のことですが、「gros mot」として使う場合は「人の口」や「人の顔」を指します。
そして「Ta gueule!」は「君の口/顔」ではなく、「だまれ!」「口を閉じろ!」という意味で使われます。
「fermer 閉じる」を使って「Ferme ta gueule! 」ということもあります。
La ferme
「La ferme!」も「だまれ!」という意味のフランス語表現。単語の順番を逆転させて「Ferme la!」と言うこともあります。
この「La」は「la bouche 口」のことで、「La ferme!」は「Ferme la bouche!」を省略した形です。
「Ta gueule!」よりは若干マシではありますが、こちらもとても失礼な言い方です。

Je m’en fous
「Je m’en fous」は「(それは)どうでもいい、興味がない」という意味で、とても下品な表現です。
それは「fous」は「foutre する、やる」という単語で、そもそもは性行為を意味する下品な話し言葉だから。
「自分には関係がないからどうでもいい」「どうなろうと知ったこっちゃない」のような侮蔑のニュアンスを相手に伝える表現です。
「どうでもいい」と言うのはそもそも相手に相手に対して失礼ですが、同じことを伝えるフランス語表現の中でも一層下品な表現になります。
どんな言い方をしても、上品になりようがない単語なのです。
そして代名動詞の「se foutre」だと「de」を伴い、「~をからかう、バカにする」という意味になります。
「どうでもいい」と言いたいときには、下記のように言い換えましょう。どちらも上品な表現ではありませんが、「Je m’en fous」よりは下品度が下がりますよ。
Je m’en moque.
Je m’en fiche.
「どちらでもいい」という意味の「どうでもいい」なら、下記のように言うことができます。
ça m’est égale.
どっちでも私には同じ(だからどうでもいい)。
【foutre を使ったその他のNG表現】
「foutre」はどんな表現でも使わない方がよい下品なNGワードですが、その中でも特にフランス人が使いがちな表現をいくつか紹介します。
Je n’ai rien à foutre.
全くどうでもいい/ 自分には全く関係ない。
Va te faire foutre.
消え失せろ/くたばれ。
C’est foutu.
全てお終いだ/台無しだ。
C’est mal foutu.
最悪だ。
※「foutu(e)」は「foutre」の過去分詞、もしくは形容詞形
J’en ai marre
「J’en ai marre」は「うんざりする」という意味。他の表現と比べると下品度はかなり低いですが、できれば使わない方がよいフランス語表現の一つです。
下品度が低い分、日常的に使うフランス人も多いため、あまり良くない表現だと気づかないまま使ってしまいがちなので注意が必要です。
「うんざりする」と言いたいときは下記のような表現を使うことができますよ。
J’en ai assez.
Je n’en peux plus.
うんざりする。
「J’en ai assez」は「もう十分です」という意味で、「うんざり」というネガティブな意味以外に、「もうお腹いっぱい」「もう十分にあります」などポジティブ、もしくはネガティブな要素を含まないニュアンスでも使われる表現です。
「Je n’en peux plus」は「もう(○○が)できない」という意味で、「もう我慢できない」というニュアンスを感じさせます。

フランス語の下品なスラング
「スラング」はフランス語で「argot」。「argot」は必ずしも下品なわけではありませんし、友達や家族の間では普通に使われるものが多いですが、それでも砕けた言葉なので使う場合は注意が必要です。
使いすぎている場合や使う場面を間違えると、下品な印象や育ちが悪い人という印象を与えてしまいますよ。
そんな「argot」のなかでも、特にポピュラー、かつ下品だと思われやすい表現を紹介します。
Mec / Nana
「Mec」は「男、奴」、「Nana」は「女、女の子」という意味の「argot」。特に若い世代は男女ともに気軽に使う表現です。
しかし日本語でも男の人や女の人といわずに男・女というと、下品な印象を与えてしまうのと同様に、フランス語では「Mec」や「Nana」は上品とはいいがたい表現となります。
ちなみに「女」を表す「argot」には、「gonzesse」という表現もあります。
Regarde ce mec, qu’est-ce qu’il est beau!
みてよ、この男。超カッコいい!
Tu connais cette nana qui est avec Nicolas?
二コラと一緒にいる女、知ってる?
Ouais
「Ouais」は「Oui はい」の「argot」。こちらも若い世代が頻繁に使う「argot」で、特に悪気の意味もなく、「Oui」の代わりに使っている人も多い印象です。
しかし、「Ouais」はだらしない印象を与えてしまう返事の仕方なので、相手によっては失礼な人だなと悪い印象を与えてしまうことも。
友人間では問題ありませんが、目上の人や初対面の人の前では使わない方が良いでしょう。
Oh la vache
「Oh la vache」はびっくりしたときに使われるフランス語の表現です。悪い意味でも良い意味でも使われます。
かなりくだけた表現ですが、フランスではかなり一般的で、普段は下品な言葉を使わないような人でも使うことがあるほど。ただし、下品だと感じる人もいるため、綺麗なフランス語を話したい方は避けた方が良いでしょう。
Oh la vache! C’est très choquant.
なんてこと!すごいショックだ。
Oh la vache! C’est trop mignon.
わあ!超かわいい!
さてそんな「vache」とは「牝牛」のこと。「vache」という単語自体は下品なわけではないので、「牝牛」といいたい時は普通に使っても大丈夫ですよ。
ちなみに「vache」は「太っている、怠け者、頭が悪い」など、女性への侮蔑の言葉としても使われます。この使い方はかなり下品なので、絶対に止めておきましょう。
Débile
「Débile」は「脆弱な」という意味ですが、「argot」では「意味のない、バカげた」という意味で使われます。
仲間内では、冗談で「バカなの?」「意味ないじゃん」ということもありますよね。それと同じようなニュアンスです。
もちろん仲間内以外で使うととても失礼になるので、止めておいてくださいね。
C’est débile!
バカみたい! / 無駄じゃん!
Bouffer
「Bouffer」は「食う」という意味の「argot」で、人だけでなく「消費する」という意味でも使われます。
「manger 食べる」「consommer 消費する」という単語よりも、ネガティブな印象を与えがちなので、これも使わない方がよい 「argot」です。
Tu bouffes comme un cochon.
豚のように食べる(食べ方が汚い、がつがつ食べる)。
Elle bouffes énormément d’essence cette voiture.
この車は大量のガソリンを食う。
ちなみに食べ放題のビュッフェは「buffet」。日本人には発音の違いが分かりにくい単語なので、間違えないように気を付けてくださいね。
まとめ
フランスで耳にすることが多いNGワードである「gros mot」や「argot」をご紹介しました。
フランス語が母国語でない私たちは、周りのフランス人が使っていると「gros mot」でも真似して使ってしまいがちです。
短い言葉で真似しやすいため、癖づいてしまうと「gros mot」とわかっていても、つい口にしてしまうもの。
フランス人が使っているからと安易に使わず、きれいなフランス語を話すようにしたいものですね。