フランスの大統領選が近づくと良く耳にするのが「primaire」という単語です。今回はそんな「primaire」の意味や背景について覗いてみましょう。
目次
立候補者はだれ?
今日の花子さんとマリーさんは大統領選の候補者について話をしているようです。
会話
Hanako: C’est bientôt l’élection présidentielle.
もうすぐ大統領選ね。
Tu penses quels seront les candidats et élus au second tour?
立候補者はだれで、だれが本選に選ばれると思う?
Marie: Je n’ai aucune idée…cela dépend du résultat des primaires.
全く分からないわ。予備選の結果次第よね。
Hanako: Soit le président sortant, soit le candidat de la partie droite ou gauche…
今の大統領か、右派か左派の政党の立候補者か…
Marie: Ça peut être la partie extrême droite comme la dernière fois.
前回のように、極右の可能性もあるわよ。
Hanako: Ça se peut, s’il y a beaucoup de candidats de deux grands partis.
もし二大政党から沢山の立候補者がいれば、ありえるわね。
Est-ce que tu votes s’il y a la primaire ouverte ? On peut voter même si on n’est pas adhérent.
開かれた予備選があれば投票する?党員でなくても投票できるわよ。
Marie: Je verrai.
わからないわ。
élection présidentielle
「élection」は「選挙」、「présidentielle」は「 大統領の」、「élection présidentielle」は「大統領選挙」のことです。
上記の「présidentielle」は形容詞ですが、名詞として「la présidentielle」だけでも「大統領選挙」を意味します。
second tour
フランスの「élection présidentielle」は直接選挙ですが、一度目の「vote 投票」で票を50%以上を獲得する候補者がいない場合は、上位2人で二度目の「vote」が行われます。
この一度目を「premier tour」、二度目を「second tour」と呼びます。
primaire
「primaire」は「予備選挙」のこと。選挙への「candidat 立候補者」を決めるために、政党内や右派左派などの政治的方針の似たいくつかの「parti」合同で行われる「élection」のことです。
「adhérent 党員」による「vote 投票」が一般的ですが、「adhérent」でなくても数ユーロ払えば参加できる「primaire ouverte 開かれた予備選挙」もあります。
予備選挙を意味する「primaire」は女性名詞ですが、男性名詞だと「小学校」の意味になるので間違えないように注意してくださいね。
parti
「parti」は「政党」のこと。「parti droite」は「右派の政党」「parti gauche 左派の政党」です。
フランスにもいくつもの「parti」がありますが、その中でも特に大きい物が2つあります。
一つは「parti droite」である「Les Républicains 共和党」。サルコジ大統領やシラク大統領を輩出している「parti」です。
もう一つは「Parti Socialiste 社会党」。オランド大統領やミッテラン大統領を輩出しています。
マクロン大統領の「La République en marche 共和国前進」は「centre 中道」の「parti」です。
フランスの「primaire」
primaireの意義
日本の首相は間接選挙で決まるので、国会に多くの座席を有する「parti」から選出されますよね。
ところがフランスの「élection présidentielle」は直接選挙のため、力の強い「parti」の「candidat」が選ばれるとは限りません。
党内で一人に絞られずに、多くの「candidat」が 「premier tour」に出馬してしまうと、その「parti」を支持する人からの票がバラけてしまい、一人も「second tour」に残れない事が出てきます。
また党内だけでなく、右派・左派の大きなくくりの中でも「candidat」が多いと当然票がバラけて、全員落選となってしまいます。
【右派と極右が当選・左派は落選】
それが顕著であったのが2002の「élection présidentielle」。当時の政府のシラク大統領(右派)、ジョスパン首相(左派)が「second tour」に残ると思われていました。
ところがジョスパン首相は3位で落選、シラク大統領は1位当選ですが、2位当選は極右のルペン党首という結果に。
右派の「candidat」は4人、左派は5人も居たため、票がバラけてしまった結果と考えられています。
このように「second tour」に残れないという結果を避けるためにも「primaire」を取り入れるようになりました。
primaireのデメリット
2017年の「élection présidentielle」では、2大政党である「Les Républicains 」と「Parti Socialiste」のどちらの「candidat」も「second tour」に残らないという結果になりました。
「primaire」はフランス全体の意見を表すものではないので、「primaire」で選ばれた「candidat」がその「parti」を指示する人以外からの指示も集められるとは限らないようです。
また「Les Républicains」の「candidat」に選ばれたフィヨン首相(当時)が、選挙期間中に不正を追及されイメージダウン、「second tour」落選という結果にもなりました。
票がバラけるのも困るが、一人に絞るのもデメリットがあるということで、「primaire」自体を見直す動きや、「parti」を介さずに立候補する人も増えてきています。
フランスの選挙システムは日本と違うため、ニュースを聞いても分かりずらいこともありますよね。
フランスでは選挙離れが問題になっていますが、それでも政治に強い関心を持っている人も沢山います。政治の話をするときは、熱くなって喧嘩に発展しないように気を付けつつ質問するようにしてください。
選挙に関するフランス語
日本人はフランスに住んでいても選挙権はありませんが、フランスの選挙事情は気になるところです。
今回はフランスの選挙に関するフランス語や投票権について覗いてみましょう。
だれに投票する?
Marie: Est-ce tu as décidé quel candidat tu vas voter ?
どの候補者に投票するか決めた?
Hanako: Bah, tu sais, je n’ai pas de droit de vote.
えっと、知ってるでしょ、私は投票権がないのよ。
Marie: Tu as oublié de t’inscrire à la liste électorale?
有権者名簿に登録するのを忘れたの?
Hanako: Non, c’est parce que je suis une étrangère.
いいえ、私が外国人だからよ。
Marie: Mais tu vis en France depuis des années. En plus tu paies des impôts aussi!
でもフランスに住んで何年にもなるじゃない。税金も払ってるんだし!
Hanako: C’est vrai, mais il faut avoir la nationalité française pour voter.
そうね。でも投票にはフランス国籍が必要なの。
Marie: C’est n’importe quoi…
ありえないわ…
Hanako: C’est comme ça. Alors, qui vas-tu voter?
仕方がないわよ。それであなたはだれに投票するの?
Marie: Je suis encore indécise. J’y réfléchirai jusqu’au jour des élections.
まだ悩んでいるの。選挙日まで悩むことにするわ。
Sinon je mettrai un vote blanc dans l’urne.
決まらなかったら白票を入れるわ。
candidat
「candidat(e)」は「候補者」のこと。「当選者」は「élu(e)」といいます。
voter
「voter」は「投票する」という意味。「投票」は「vote」です。
- bureau de vote 投票所
- bulletin de vote 投票用紙
- vote blanc 白票
- vote nul 無効票
- vote par procuration 不在者投票
「bulletin de vote」を入れる「投票箱」は「urne」です。
élection
「élection」は「選挙」、「選挙の」は「électoral」。「選挙日」は「jour des élections」です。
- élection présidentielle 大統領選挙
- élections législatives 国民議会選挙
- élections municipales 地方選挙
- élections cantonales 県議会選挙
フランスの選挙の投票権
フランス語で「投票権」は「droit de vote」。フランス「élection」の「droit de vote」を得るためには下記の条件を満たす必要があります。
disposer de la nationalité française
フランス国籍を持っている
フランス人の中には文中のマリーさんのように、外国人でもフランスに長く住んでいて税金を払っていれば選挙権があると思っている人がいます。
そのため国籍がないから「droit de vote」が無いと伝えるとビックリされることもあるんですよ。二重国籍を認めている国であることも関係しているのかもしれませんね。
être majeur
成人している
フランスの成人は18歳です。
jouir de ses droits civils et politiques
民法と政治の権利を有している
つまりは有罪が確定した受刑者は除く、という意味です。
être inscrit sur la liste électorale
有権者名簿に登録している
フランスで投票するには「carte électorale 選挙人名簿登録証明書」が必要です。これを取得するためには市役所に行って「liste électorale 有権者名簿」に登録する必要があります。
18歳になったり国籍を取得したりで「droit de vote」が発生しても、自分から登録しに行かないといけない点も日本とは違いますね。
引っ越しするたびに新たに登録する必要があり、遅くても「élection」の約一か月前には申し込んでおく必要があるので、ギリギリまで忘れていた場合は投票できないこともあります。
フランス選挙の投票の仕方
フランスの「bureau de vote」で投票する方法は、とても簡単です。
「carte électorale」と「carte d’identité 身分証明書」を見せ、「liste électorale」に乗っているかを確認してもらいます。
テーブルに各「candidat」の「bulletin de vote」と封筒が置かれているので、それを一枚ずつ取り「isoloir 投票用紙記入ボックス(カーテンなどで仕切られた小部屋)」に入ります。
そこで封筒に選んだ「candidat」の「bulletin de vote」を入れたら、外にある「urne」に入れてお終いです。
「vote」の秘密性を守るために、必ず全ての「candidat」の「bulletin de vote」を取る必要があり、投票する人のものを一枚だけ取るのはいけないという決まりがあります。
まとめ
フランスの選挙に関するフランス語をご紹介しました。
フランス人は政治に関心が高い人が多く、友人間でも選挙の話題になることは少なくありません。代表的な単語を覚えて、会話に参加してくださいね。
※2022年4月の情報