よく言えばおおらか、悪く言えば大雑把なイメージのあるフランス人ですが、ゴミの分別はどのように行われているのでしょうか。
今回は華の都と呼ばれるパリを始め、フランスのゴミ事情を覗いてみましょう。
フランスのゴミ分別方法
まずは「ゴミ」をフランス語ではなんというのか、みていきましょう。
目次
「ゴミ」のフランス語
- déchets くず、廃棄物
- ordures ゴミ、汚物
フランス語で「ゴミ」は「déchets」、もしくは「ordures」といいます。
「déchet」は普通、複数形「déchets」で「くず・廃棄物」を意味します。「ordures (こちらも複数形で使用)」は「déchet」よりも「もっと汚らしいもの・汚物」というイメージ。家庭ゴミでいえば、生ゴミや衛生関係のゴミなどでしょうか。
déchets ménagers
ordures ménagers
家庭ゴミ
「ménagers」は「家事の」という意味。「家庭ゴミ」といいたいときは、「déchets ménagers」と「ordures ménagers」のどちらを使っても問題ありません。
à jeter
捨てるもの
「ゴミ」という名詞ではありませんが、捨てるものに対しては「jeter 捨てる」を使った「à jeter」という表現もよく使われます。
C’est à jeter.
これはゴミ(捨てるもの)だよ。
Est-ce qu’il y a quelque chose à jeter?
なにかゴミ(捨てるもの)はある?
フランスのゴミ事情とは?家庭ゴミの捨て方
フランスで家庭ゴミを捨てるのは日本よりもずっと簡単!もちろん分別のルールはありますが、かなりおおざっぱでストレスなく取り組めるルールになっているんですよ。
家庭ゴミの回収
collecte des déchets ménagers
家庭ゴミの回収
- collecte 集めて回ること、回収
フランスでは日常的な家庭ゴミは、回収日に家の前に出しておけばOK。日本のようにゴミ捨て場までもっていく必要はありません。
パリなどの大都会でない限りは、ゴミ収集の時間は早朝がほとんどで、多くの人が動き出す前の朝8時ごろまでにゴミ収集車が回収してくれます。
早いところでは、朝の5時ごろにゴミ収集車が通ることもあるので、前日の夜からゴミを外に出しておいても問題ありません。ゴミ出しのために早起きをしなくてもいいのはありがたいですよね。
bacs à couvercle
フタ付きの大きな容器(ゴミ箱)
フランスのゴミは、各家庭や建物ごとに割り当てられた車輪付きの大きなゴミ箱「bacs à couvercle」に入れて、道路に出しておく仕組みです。
このゴミ箱は、自分で購入するのではなく、市などから建物のサイズなどに合わせて支給されます。
「bac」とは「大きな容器」のことですが、ゴミ収集に使われるゴミ箱は一般のゴミ箱よりも大きいため、「bac」という単語が使われることがほとんどです。
ちなみに一般的なゴミ箱はフランス語で「poubelle」といいます。
フランスのゴミ回収については、こちらの記事でも紹介しています。
パリのゴミ分別
tri sélectif
ゴミの分別
「tri」は「選別」、「sélectif」は「選択的」の意味です。同じような意味の単語が並び、結局何が言いたいの?となってしまいますが「tri sélectif」で「ゴミの分別」を指します。
ゴミの分別方法は地域によって違いますが、例としてパリを見てみましょう。
Collecte des ordures ménagères et assimilés : bacs à couvercle vert ou gris ramassés quotidiennement ;
Collecte du verre : bacs à couvercle blanc ramassés une fois par semaine ;
Collecte des autres déchets recyclables (multimatériaux, papier, carton, emballages plastiques, etc.) : bacs à couvercle jaune ramassés trois fois par semaine ;
Collecte des déchets alimentaires dans les 2e, 12e et 19e arrondissements : bacs à couvercle marron
引用元:https://www.paris.fr/pages/la-collecte-44
家庭ゴミや類似のゴミの収集:緑、もしくはグレーのフタのゴミ箱は毎日集められる
ガラスの収集:白いフタのゴミ箱は週に一度集められる
その他のリサイクル可能なコミの収集(異素材の組み合わせ、紙、厚紙、プラスチック容器など):黄色いフタのゴミ箱は週に三回集められる
2区・12区・19区における食品のゴミの収集:茶色のフタのゴミ箱
パリのゴミ分別は大きく分けて4種類。ゴミ箱のフタの色によってゴミの種類が分かるようになっています。
bacs à couvercle verte ou gris 緑かグレーのフタのゴミ箱
フランスでも家庭ゴミは分別の必要がありますが、リサイクルできるゴミ以外のいわゆる普通ゴミは、緑かグレーのフタの「bacs à couvercle」に捨てます。
パリの場合は、このゴミ箱の収集は「quotidiennement」、つまり毎日行われているとのこと。便利ではありますが、「bacs à couvercle」はゴミ収集後は建物内に入れなければいけないので、その点だけが面倒ですね。
bacs à couvercle blanche 白いフタのゴミ箱
白いフタの「bacs à couvercle」は「verre」、つまりビン類のリサイクル用となっています。
対象となる「verre」は「ガラス」のことですが、ガラス製品すべてがOKなわけではなく、下記のような食料品が入っているガラス類が対象です。
- bouteille (飲み物などの)ボトル
- bocal 広ビン
- pot つぼ
割れたコップやグラス、その他のガラス製品は入れてはいけないので注意しましょう。
bacs à couvercle jaune 黄色いフタのゴミ箱
ビン類以外でリサイクル可能なものは、全て黄色いフタの「bacs à couvercle」に入れてOKというのがパリの分別方法。どんなゴミがリサイクル可能かというと、パリ市のサイトには下記のように例が挙げられています。
- multimatériaux 異素材の組み合わせ
- papier 紙
- carton 厚紙
- emballages plastiques プラスチック容器
つまり、新聞や包装紙などの紙類・ビールやヨーグルトなどのパッケージの厚紙・ダンボール・さまざまなプラスチック容器など、日本では個別に分類しなければいけないようなゴミをまとめて捨ててOK!明確に記載はされていませんが、アルミなどの空き缶もOKです。
「multimatériaux」とも記載されているので、リサイクルできるものならゴミ箱に入るような小型家電なども入れてOKということです。
ビン類以外のリサイクルゴミ全てということですが、おおざっぱさにびっくりしてしまいますよね。それだけゴミ処理場の分類能力が向上しているということなのでしょう。
~手間がかからないリサイクルゴミ~
白や黄色いフタの「bacs à couvercle」に食品関係のゴミを捨てる場合、洗ったりラベルをはがしたりの手間は不要で、そのまま捨ててOK。
油でギトギトのツナ缶や、ジャムが入っていた容器も洗う必要はありません。とはいえ、臭いや衛生面が気になり、つい洗いたくなりますが…。洗うことで無駄に水を使用することになるので、洗わないことが推奨されています。
bacs à couvercle marron 茶色いフタのゴミ箱
3つの区だけではありますが、「déchets alimentaires 食品類のゴミ」の分別回収も行われています。
食品は70%もの水分を含むため、普通ゴミと共に燃やしてしまうのは、とてもエネルギー効率が悪いとのこと。そのため別で回収し、コンポストやバイオガスの原料として利用されています。
ゴミの分別回収だけでなく、パリの街中に「déchets alimentaires」用のゴミ箱が設置され、どの場所でも徒歩三分以内のところで「déchets alimentaires」が捨てられるようになるとことです。
分別回収がない区の住民も、パリのゴミ問題や環境保護のためにゴミ分別に協力できるようになっています。
では「déchets alimentaires」とはどんなものを指すのでしょうか。パリ市のサイトでは下記のように説明されています。
Préparation de repas : épluchures de légumes, de fruits, coquilles d’œuf, découpes de viande et de poisson.
Fin de repas : les sachets de thé, les filtres à café et les serviettes de table en papier.
Restes de repas : tous les restes de légumes, de fruits, les salades, avec ou sans sauce, les pommes de terre, pâtes, riz, tous les restes de viande, de charcuterie, de poisson y compris coquillages et crustacés (coquilles d’huîtres, de moules…), les restes de fromage, de pain, de pâtisserie.
Produits alimentaires périmés
引用元:https://www.paris.fr/pages/le-tri-des-dechets-alimentaires-a-paris-24842
食事の準備:野菜や果物のクズ、卵の殻、肉や魚片
食事の終わり:ティーバッグ、コーヒーフィルター、紙ナフキン
食事の残り:全ての残った野菜、フルーツ、サラダ、ソースあり/なし、じゃがいも、パスタ、米、肉、ハム類、貝類や甲殻類(牡蠣やムールの殻…)を含む魚、チーズ、パン、ケーキ
期限切れの食品
パリの「déchets alimentaires」には、野菜や果物だけでなく肉や魚なども含まれ、食品でない紙ナフキン、卵のパック、キッチンペーパーなども含まれているのが面白いですね。
ただし、ゴミ回収と街中のゴミ箱では捨てられる内容が異なり、ゴミ回収では全てOKですが、街中のゴミ箱はコンポストとしてリサイクルされるため、肉や魚はNGとなっています。
地方のゴミ分別方法
パリは上記したように4種の分別に分かれていますが、地方によって分別方法やゴミ箱の色はさまざま。日本でも自治体によって分別方法は違いますが、フランスでも地区によって違うので、しっかり確認してから行う必要があります。
そして紙類やガラスボトルなどのリサイクルゴミは、自分で収集ポイントまで捨てに行かなくてはいけない場合もあります。とはいっても、ゴミ処理場まで行く必要はなく、街中にリサイクル用のゴミ箱があるので、そこへもっていけばOKです。
また庭付き一軒家の多い地域では、草刈や木の剪定で生じる「déchets vert(ここでのvertは緑色ではなく、生の植物のこと)」を収集に回って来てくれる場合もあります。
パリでは「déchets alimentaires」として分別するような野菜などの生ゴミも、「déchets vert」用のゴミ箱がある場合はそこに捨てることができます。
パリ以外の地方でも、街中にコンポスト用のゴミ箱が設置されつつありますが、まだまだ数が少なく、普通ゴミとして捨てられていることが多いよう…。たしかに、生ゴミだけわざわざ他の場所に捨てに行くのは、めんどくさいですね。
フランスのゴミ袋
フランスでは、「bacs à couvercle」は市などから支給されますが、「sac poubelle ゴミ袋」はスーパーなどで市販品を購入します。
フランスの「sac poubelle」の特徴は、口を縛れるようになっている点。高いタイプは巾着のように口を絞れるようになっていたり、持ち手が付いていてそれで口を縛るようになっているものもあって便利なんですよ。
安いタイプの場合はヒモが付いていて、それで「sac poubelle」の口を縛れるようになっています。
【支給されるゴミ袋】
リサイクル用の「bacs à couvercle」は支給されないこともありますが、そんな場合は、市役所などでリサイクル用のゴミ袋を無料で支給してもらいましょう。
貰いに行くのが面倒だからと、市販の「sac poubelle」に入れて出してしまうと回収されないので、面倒でも貰いに行く必要があります。
フランスの粗大ゴミの捨て方
déchets encombrants
粗大ゴミ
- encombrants 場所をふさぐ、じゃまな
「déchets encombrants」を捨てたい時は、ゴミ回収を依頼して、無料で取りに来てもらうことができます。もちろん量に限りはありますが、パリならネットで予約がとれますよ。
地方都市では車を持っている人が多いので、自分たちで「déchetterie ゴミ廃棄場」へ持っていく人もたくさんいます。粗大ゴミの収集日を待つより、自分たちで捨てに行く方が早いと思うフランス人は多いようです。
そしてフランス人は「déchets encombrants」を道端に捨ててしまうことも…。道端に捨てるのはいけないことですが、だれか欲しい人が勝手に持って帰ってくれることも少なくありません。
夜中にコソコソッと取りに来るのではなく、日中でも堂々と持って行ってしまうので、逆にそれが当たり前なような気がしてしまうほどです。
フランス人の粗大ゴミの捨て方については、こちらの記事でも紹介しています。
パリの街がゴミだらけ!ごみ収集のストライキ
フランスでは時折ゴミ収集作業員のストライキがあり、街中にゴミが溢れてしまうことがあります。
2023年にパリで起きたストライキは年金制度改革に反対するものでしたが、マルセイユなど他の都市でも、雇用条件改善などを掲げてストライキが行われ、ニュースに取り上げられています。
「bacs à couvercle」に入りきらないゴミ袋が街中に散乱、悪臭やネズミなどの有害動物の被害にうんざりする住人達…。
しかしゴミ回収がないとわかっているのに、ゴミ出しを控えようとしないのもフランス人。出たゴミはいつも通り捨てるので、街にゴミが溢れかえることになってしまうのです。
フランス語会話:便利なゴミ箱
今日のマリーさんは、花子さん宅にお邪魔しています。キッチンで気になるものを見つけたようです。
Marie : Tiens, tu as changé de poubelle. Elle a l’air très pratique.
あら、ゴミ箱を変えたのね。とっても便利そう。
Hanako : Oui, elle est très bien pour le tri sélectif.
ええ、ゴミの分別にとてもいいわよ。
Marie : Elle a trois compartiments, une pour les déchets normaux, une pour les déchets recyclables, et l’autre sert à quoi ?
仕切りが3つあるのね。一つは普通ゴミ、一つはリサイクルのゴミ、もう一つは何のため?
Hanako : Moi, je mets les bouteilles vides. Mais il est un peu petit pour les bouteilles, tu ne trouves pas ?
私は空ビンを入れているわ。でもビンには少し小さいのよね。そう思わない?
Marie : C’est vrai. Tu n’as qu’à demander à ton mari de les descendre tous les matins quand il part au travail.
確かにね。毎朝仕事に行く時に、もって降りてくれるようご主人に頼めばいいのよ。
Hanako : C’est ce que je fais déjà !
それはもうやってるわ!
【ポイント】
compartiment
「compartiment」は「仕切り」のこと。会話中に登場するゴミ箱は、仕切りで3つに分かれているものであるのが分かりますね。他には、電車の仕切られた客室を表すのにも使われる単語です。
recyclable
「recyclable」は「リサイクルできる」の意味の形容詞です。ちなみに名詞で「リサイクル」は「recyclage」。同時に覚えてしまいましょう。
まとめ
フランスのゴミの捨て方や分別方法について紹介しました。
環境保護のためにも、ゴミのリサイクルに力を入れているフランスですが、捨てる側は細かい分別が不要で手間もかかりません。
日本人よりも細かいことにこだわらないフランス人でも、気軽に取り組めるそうですね。