フランスにはじゃがいもの種類がたくさんあり、どれを購入すればいいか困ってしまうことも!
フランス人が大好きで、家庭料理でも大活躍してくれるじゃがいもは、近所のスーパーやマルシェでも、数種類が並んでいることが多いんですよ。
フランス語で「じゃがいも」は?たくさんある種類も解説!
目次
じゃがいものフランス名
pomme de terre
じゃがいも
「じゃがいも」はフランス語で「pomme de terre」。「pomme」は「りんご」、「terre」は「大地」。合わせて「pomme de terre」は直訳すると「大地のりんご」ですが、「じゃがいも」のことです。
口語では「patate」という表現もよく使われますが、「バカ」という意味も持つ単語です。かなり砕けた表現なので、親しい友達との間での使用にとどめておく方が良いでしょう。
ちなみに「さつまいも」は「patate douce」。こちらはじゃがいもとは違い、正式名称なので、お店などで使っても大丈夫ですよ。
フランスのじゃがいもの種類
マルシェなどでずらっと並んだ「pomme de terre」を前にしても、どれを購入すればよいか悩んでしまうものです。
自分で品種を選べないなら、どんな食感の「pomme de terre」が欲しいのか「chair 果肉」の質を伝えれば、お店の人が選んでくれますよ。
pomme de terre à chair ferme「締まった」
「ferme」は「締まった」という意味。加熱するともちっと詰まった食感で、煮崩れしにくい肉質の「pomme de terre」を指します。
主な品種はこちら。
- Amandine
- Annabelle
- Belle de Fontenay
- Charlotte
- Chérie
- Ratte
- Roseval
加熱しても崩れないので、ソテーやシンプルに蒸したり茹でたりしてメインの添え物としてよく登場します。
そしてフランスではポテトサラダも「pomme de terre」の食感がしっかり残っているものが好まれるので、このタイプが使われます。
- Cynthia
「Cynthia シンシア」はマツコの知らない世界で紹介されたことで有名になったフランス産の品種。こちらも「pomme de terre à chair ferme」に分類されます。
pomme de terre à chair fondante「柔らかい、溶ける」
「fondante」は「柔らかい、溶ける」という意味。加熱するとホクッとして柔らかく、煮崩れしやすい肉質の「pomme de terre」を指します。
- Agata
- Monalisa
- Nicola
- Samba
- Vitelotte
柔らかい肉質なので、オーブンで塊肉と一緒に焼くと肉汁をすって絶品!崩れやすいですが煮込み料理やソテーにもよく使われ、汎用性が高い「pomme de terre」です。
pomme de terre à chair farineuse「でんぷん質の、粉っぽい」
「farineuse」は「でんぷん質の、粉っぽい」という意味。「fondante」よりももっとホクホクで、粉っぽい肉質の「pomme de terre」を指します。
- Apollo
- Artemis
- Bintje
- Marabel
ホクホクの食感が生きる「frites フライドポテト」や、「fondante」よりさらに崩れやすいのでスープやピュレに人気です。
「fondante」と「farineuse」は比較的肉質が似ているものが多く、扱い品種の少ないお店ではどちらか片方しかない場合もあります。
用途別のじゃがいも
スーパーなどで売られている「pomme de terre」は、パッケージにどんな料理に向いているか書いてある物もあり、主に下記のような用途があります。
- frites フライドポテト
- gratin グラタン
- mijoté 煮込み
- purée ピュレ
- sautée ソテー/ 炒め料理
- soupe スープ
- vapeur 蒸し
どの料理にどんな「pomme de terre」を選べばよいかわからない時は…
C’est pour faire ○○.
○○用(○○を作るため)です。
このように伝えれば、お店の人がぴったりの品種を選んでくれますよ。
【pomme de terre de consommation】
- consommation 消費
「pomme de terre」の中には、「pomme de terre de consommation」と表示されて売られているものがあります。
これは比較的汎用性に優れた品種の「pomme de terre」で、果肉が締まりすぎておらず、加熱してもすぐには崩れないタイプを指しています。
特に品種名が書かれていないことがほとんどですが、「chair ferme」と「chair fondante」の中間の果肉のイメージです。
「consommation」という名の通り、他のものよりも安いことが多く、大量に消費する家庭向きといえるでしょう。
どの料理に使うか決めてないけど、とりあえず買っておこうかな、というときにもこのタイプがいいかもしれませんね。
フランスの代表的なじゃがいも料理
じゃがいものグラタン
gratin dauphinois
ドフィネ地方のグラタン
- gratin グラタン
- dauphinois ドフィネ地方の
「gratin dauphinois」は薄切りの「pomme de terre」を牛乳や生クリームで煮込んで、チーズをかけて焼き上げたグラタンです。茹でた「pomme de terre」に牛乳などを加えるのではなく、「牛乳や生クリームで」煮込むのが特徴的。
とてもシンプルな料理ですが、層になったじゃがいもと濃厚なクリームがベストマッチ!家庭料理でもレストランの付け合わせとしても登場する人気レシピです。
じゃがいもとひき肉のグラタン
hachis parmentier
パルマンチエのひき肉
- hachis ひき肉
- parmentier パルマンチエ(人の名前)
「hachis parmentier」とは牛のひき肉を「pomme de terre」のピュレで覆ったグラタンのこと。「pomme de terre」を使った代表的な家庭料理です。
名前にもなっている「Parmentier」は、ルイ16世の時代にフランスで 「pomme de terre」の普及に尽力した人物名で、彼のおかげで数多くの命が飢餓から救われました。
じゃがいものスープ
soupe vichyssoise
ヴィシー風のスープ
- soupe スープ
- vichyssoise ヴィシー風の
「soupe vichyssoise」は「pomme de terre」の冷製スープのこと。「poireau ポロネギ」と共に炒めて裏ごしし、生クリームを加えた喉越しのよいスープです。
この「soupe vichyssoise」、日本ではそれなりに名前が有名なのですが、実際は家庭でもレストランでも見かけることがほとんどないので、食べたことがないというフランス人もたくさんいそうです。
じゃがいものサラダ
salade piémontaise
ピエモンテ風のサラダ
- salade サラダ
- piémontaise ピエモンテの
「salade piémontaise」は茹でた「pomme de terre」にゆで卵やピクルス・ハムなどを加え、マヨネーズで和えたサラダのこと。
日本のポテトサラダのようなものですが、「pomme de terre」をつぶさないこと、そしてマヨネーズで和えるというより、マヨネーズの中に具材を入れたかのようなバランスである点が大きな違いです。
そして「piémontaise」の「piémont」とはイタリアのピエモンテ州のこと。もともとはロシアを起源とするサラダですが、ピエモンテで流行したものがフランスにもたらされたため、この名称で呼ばれているとのことです。
じゃがいものガレット
galettes de pomme de terre
じゃがいものガレット
- galette ガレット、丸くて平たいもの
「galettes de pomme de terre」は細切りにしたじゃがいもを、平らな円形にまとめてフライパンなどで焼き上げたもの。
家庭料理ではありますが、スーパーでも冷凍されているものが数種類売られていて、焼くだけでOKな簡単な付け合わせという位置づけです。
付け合わせとしてのじゃがいも
フランスの家庭料理では、「pomme de terre」を使ったシンプルな付け合わせが頻繁に登場します。
purée de pomme de terre
じゃがいものピュレ
- purée ピュレ(野菜などを裏ごししたもの)
家庭でも「purée de pomme de terre」は人気の付け合わせの一つですが、シンプルでありながらも、レストランのようなスムーズな口当たりに仕上げるのは、なかなかに根気がいる作業です。
そのためフランスの一般家庭ではピュレの素が大活躍。お湯を加えて混ぜるだけでOKなので、共働きで忙しいフランス人家庭で愛用されています。
もう少し手をかけるのであれば、茹でた「pomme de terre」を「presse-purée マッシャー」で潰したものも登場します。「purée」というには食感が荒いときは「écrasé de pomme de terre 潰したじゃがいも」と呼ばれます。
pomme de terre à la vapeur
蒸したじゃがいも
- vapeur 蒸気、湯気
皮をむいて蒸しただけの「pomme de terre」も、フランス家庭料理の代表的な付け合わせ。小さく切ったりせず、ごろんと丸ごと!というのがフランス風です。
シンプル過ぎて日本人的には、何か手を加えたくなるところですが…。フランス風の付け合わせにするなら手を加えず、塩を振ったり、メインの肉や魚のソースを絡めて頂きましょう。
pomme de terre rôtie
じゃがいものロースト
- rôti ロースト(オーブン焼き)
※「pomme de terre」は女性名詞なので「rôti」にも「e」がついて「rôtie」になります。
ロースト料理だけでなく、さまざまな料理の付け合わせとしても「pomme de terre rôtie」は大活躍!大きな「pomme de terre」ならば切り分けて、小さなものなら皮付きのままオーブンで焼き上げます。
特に新春に出回る「pomme de terre nouvelle 新じゃが」の「rôtie」はごちそう扱い。水分が多いためホクホクした味わいではありませんが、新じゃがのローストならではの美味しさがあります。
チーズを使ったじゃがいもの郷土料理
「pomme de terre」とチーズは高相性ですよね。フランスにもそんな二つを使った、美味しい郷土料理があります。
raclette
ラクレット
フランス人が好きな料理の上位にランキング入りするのが「raclette」。日本でも知名度が上がっていますが、溶かした「raclette」と呼ばれるチーズを、じゃがいもにかけて頂く料理です。
もともとはフランスのサヴォア地方の名物ですが、フランス人は各家庭に専用の器具があるといっても過言ではないほど、「raclette」が大好き。
料理といっても「pomme de terre」を茹でるだけで、あとは市販の「raclette」とハム類を用意するだけなので準備はとても簡単。秋~初春にかけて、何度も食卓に登場します。
家族や友人と集まるときのメニューとしても人気です。日本の鍋料理のような感覚でしょうか(とは言っても、ヘルシー度は全く違いますが…)。
aligot
アリゴ
「aligot」はフランスの中南部に位置するオーブラック地方の郷土料理。「purée de pomme de terre」に熟成させないチーズ「tome fraîche」を加えて、全体が溶けたチーズのように伸びるまで、かき混ぜ続けて作ります。
なかなかの体力仕事なので、自分で作るのはとても大変。翌日は腕が筋肉痛になってしまうことでしょう。興味のある方は、オーブラックの郷土料理の食べられるレストランを探してみてくださいね。
truffade
トリュファード
「truffade」は「aligot」と同じくオーブラック地方の郷土料理で、「pomme de terre」と「tome fraîche」を使うという点も同じ。
こちらは輪切りの「pomme de terre」をたっぷりの油脂でソテーし、そこに「truffade」を加えてこんがりと焼き上げる料理です。
「truffade」という名前の響きから、高級食材のトリュフが入っているのかな?と思ってしまうかもしれませんが、トリュフは入っていません。
トリュフが入っていないのに「truffade」という名前なのは、「occitan オック語(フランス南部で使われていた言語)」では、「truffe」は「pomme de terre」のことだから。そのため、「pomme de terre」の料理=「truffade」と呼ばれているとのことです。
tartiflette
タルチフレット
「tartiflette」はサヴォワ地方の郷土料理で、「reblochon」というチーズと「pomme de terre」を使った一品です。
切った「pomme de terre」を玉ねぎとベーコンと炒め、そこにクリームと白ワインを加えます。最後に「reblochon」をどんっと乗せて、オーブンで焼いたら出来上がり。
「reblochon」を贅沢に使うため、チーズに「pomme de terre」が浸かっているような仕上がりになります。
フランス人の主食はじゃがいも?
フランス人の主食はパンですが、「pomme de terre」も家庭によっては主食といえるほど頻繁に、そして大量に食卓に上がる食材です。
フランス人が消費する食品TOP10にも、フライドポテトがランクインしているほど。フライドポテトだけでTOP10入りなので、「pomme de terre」全般の消費量になると、とても多いであろうことが想像できますね。
家庭では、肉や魚料理の付け合わせがフライドポテトなどの「pomme de terre」だけということも多いので、日本人的には他の野菜も食べたい!となってしまうことも。
手軽な値段のレストランでも、メイン料理の付け合わせがシンプルに調理された「pomme de terre」だけということも少なくありません。細々とした付け合わせがお皿に並ぶ日本のレストランに慣れている私たちには、手抜きに思えてしまいますが…。
家庭にしてもレストランにしても、手抜きではなく「pomme de terre」をドーンと食べる文化なんだな、と受け入れてくださいね。
そして冬には「pomme de terre」とチーズを使った料理がメインとして頻繁に登場!
サラダが付け合わせに登場することもありますが、基本は「pomme de terre」を使ったメイン料理をたっぷり頂きます。
まさに「pomme de terre」が主食という印象を受けますが、そんなときでもフランス人はパンを食べることもあるので、「pomme de terre」は主食級の食材ではあるけれど、やぱりパンが主食なのでしょう。
炭水化物×炭水化物で、うわぁ~と思ってしまいますが、日本でもご飯×麺類という組み合わせもあるので、同じようなものといえるのかもしれません。
消費が多いフランスの食品が気になる方は、こちらの記事がおすすめです。
フランス語会話:じゃがいもをください
今日の花子さんは八百屋さんでお買い物中。じゃがいもを購入するようですよ。
Hanako: Je voudrais un kilo de pomme de terre, s’il vous plaît.
じゃがいもを一キロください。
Vendeur: Qu’est-ce que vous voulez comme variété?
店員:どの種類がいいですか?
Hanako: C’est pour cuire à la vapeur et pour faire de la purée.
蒸す用と、ピュレにする用です。
Vendeur: Dans ce cas, il vous faut une variété à chair ferme et une autre plus fondante.
それなら、固い肉質の種類と、もっと崩れやすい種類が必要ですね。
Hanako: Vous avez raison. Je prends alors cinq cents grammes de chaque.
確かに。じゃあ、それぞれ500gずつ頂きます。
Vendeur: La charlotte pour à la vapeur, et la monarisa pour la purée, ça vous va?
蒸す用にシャルロット、ピュレ用にモナリザ、これで良いですか?
Hanako: Oui, c’est parfait. Merci.
ええ、それでいいです。ありがとう。
【ポイント】
c’est parfait
「parfait」は「完全な、完璧な」という意味。「c’est parfait」は直訳だと「完璧です」となりますが、日常ではもっと軽い「いいですね、大丈夫です」のニュアンスで良く使われます。
お店や飲食店の店員さん相手に使うと、同じ意味でよく使われる「c’est bon / c’est bien」よりも、少し親しみや満足感を表現できます。
まとめ
フランスの食卓には「pomme de terre」が登場する機会が多く、1キロ単位ではなく5キロ・10キロとまとめ買いする人もいるほどです。
付け合わせに「pomme de terre」、しかもパンも食べるので炭水化物の食べ過ぎになってしまいそうですが…。
品種名や特長を覚えて、フランス式「pomme de terre」料理に挑戦してみてはいかがでしょうか。