フランス語「アンニュイ」の本当の意味と注意すべき使い方とは?

  1. フランス語講座

日本でよく使われる「アンニュイ」は、元々フランス語の「ennui」という単語が起源です。しかし、「アンニュイ」が日本ではおしゃれやミステリアスな雰囲気を指す一方で、フランス語の「ennui」は元々「心配・悩み・退屈」を意味します。これらの言葉が異なる文化的背景によって違った意味で使われていることについて詳しく解説します。

褒めたつもりが貶すことにならないよう、本来の意味を確認していきましょう。

フランス語「アンニュイ」の本当の意味と注意すべき使い方とは?

フランス語の「アンニュイ」の意味と使い方

「アンニュイ」とは日本でも使われる表現ですが、そもそもは「ennui」というフランス語の名詞です。

まずはフランス語での本来の意味と使い方を確認していきましょう。

「アンニュイ」の意味

ennui」の主な意味は「心配・悩み・退屈」。実際に心配事や悩みがある、なにか困っている、暇すぎて退屈している、うんざりしている、イライラしている、などを指します。

類義語は「problème 問題」「inconvénient 不都合」「emmerde うんざりすること」など。

フランス語の「ennui」の本来の意味と、日本で使われる「アンニュイ」は大きく印象が違うことにびっくりするのではないでしょうか。

日本語の中で使われるときは、心配や悩みがありそう→物憂げな様子がミステリアスでモテそうなど、誉め言葉のようなポジティブな意味も感じられますよね。

また、困らされている、うんざりしている、というニュアンスは日本語の「アンニュイ」にはありません。

同じように心配や悩みがある状態だとしても、フランス語の「ennui」と日本語の「アンニュイ」では与える印象がまったく違うことに注意しましょう。

「アンニュイ」の対義語

フランス語の「ennui」の対義語も確認しましょう。さらに日本語の「アンニュイ」とのニュアンスの違いが明確になりますよ。

  • bonheur 幸運、幸せ
  • charme 魅力、色香
  • joie 喜び
  • satisfaction 満足

このように、フランス語の「ennui」の対義語は、どれもポジティブな単語です。ここからも、「ennui」はネガティブな意味の単語であることがわかりますね。

また、日本語の「アンニュイ」は物憂げな雰囲気がセクシーな人にも使われますが、フランス語では魅力や色香を意味する「charme」も「ennui」の対義語です。

つまり「ennui」は日本のように魅力を表す意味はなく、魅力の反対の意味であることもわかります。

フランス語では「あの人はアンニュイな魅力があり素敵」のような表現はできないので注意しましょう。

「アンニュイ」の使い方

心配・悩みなどでは「ennuis」と複数形で使われることがほとんどです。困っていることがある、面倒ごとがある、などを「avoir」と共に表現できます。

J’ai des ennuis de santé.

健康上の心配がある。

Tu as toujours un tas d’ennuis.

君はいつも山のようにトラブルを抱えている。

いかがでしょうか。上記の例文でも「ennui」の中身は健康上の心配やトラブルであり、ネガティブな内容であることが分かりますね。

女性が頭の上に手をかざし、頭痛を描いて苦しみを表現している。

会話で確認!フランス語のいろいろな「アンニュイ」

フランス語の「ennui」には、左記の名詞以外にも、形容詞や動詞などいろいろな表現や意味があります。

ここからはフランス語会話を通して「ennui」の色々な表現を学んでいきましょう。

【会話】

今日の花子さんとマリーさんは映画館に来ています。ところが終わってみると、残念ながらあまり楽しくなかったようですよ。どうして楽しくなかったのでしょうか?

Marie : Tu as aimé ce film ? Je le trouve un peu ennuyeux.

この映画、面白かった?私はちょっと退屈な映画だと思うわ。

Hanako : Tu as raison. Il est ennuyeux et trop long !

その通りね。退屈だし、長すぎるわ!

Surtout au milieu, je m’ennuyais tellement que j’ai failli m’endormir.

特に中盤では、退屈しすぎて寝そうになったもの。

Marie : Je comprends.  Mais moi, en tout cas, je n’avais pas sommeil pendant la séance.

分かるわよ。でも私、ともかく上映中に眠くはならなかったわ。

Hanako : Ah bon ?

そうなの?

Marie : En fait, un couple assis à côté de moi,  m’ennuyait beaucoup.

あのね、隣に座っていたカップルにすごくイライラさせられたのよ。

Ils n’arrêtaient pas du tout de parler, de bouger, et de manger du pop-corn !

話すのも、動くのも、ポップコーンを食べるのも全然やめないの!

Hanako : Pas de chance. C’est à cause d’eux que tu avais l’air irritée en sortant de la salle.

ついてなかったわね。上映室を出たときイライラした様子だったのは彼らのせいだったのね。

J’étais assez ennuyée.

心配したのよ。

Marie : Désolée de t’ennuyer. Mais je n’aime pas les gens ennuyeux comme eux qui ne peuvent penser qu’à eux.

心配させてごめんなさいね。でも、あんな自分たちの事しか考えられない困った人達ってきらいだわ。

ここからは会話で使われた文を中心に、フランス語の「ennui」に関する表現を見てみましょう。

形容詞「ennuyeux(se)」

形容詞の「ennuyeux(se)」は「嫌な・困った・退屈な」という意味です。

Je le trouve un peu ennuyeux.

私は(その映画を)退屈だと思う。

Il est ennuyeux et trop long !

(その映画は)退屈だし、長すぎる!

1つ目の文では「le」が、2つ目の文では「il」が「その映画」を指しています。どちらも「退屈な映画」であったことを述べていますね。

je n’aime pas les gens ennuyeux comme eux qui ne peuvent penser qu’à eux.

あんな自分たちの事しか考えられない困った人達ってきらいだわ。

こちらの文で「ennuyeux」なのは「eux qui ne peuvent penser qu’à eux 自分たちの事しか考えられない人達」です。

ですので、この場合の「ennuyeux」は「退屈な」人達ではなく「困った・嫌な」人達の意味が正解ですね。

「退屈な人」は「quelqu’un d’ennuyeux」といいます。例えば…

A:Ca s’est bien passé ton premier rendez-vous? Comment il était?

初デートは楽しかった?彼はどんな人だった?

B:C’était quelqu’un de très ennuyeux, parce qu’il ne parlait que de lui.

とっても退屈な人だったわ。だって彼は自分の事しか話さないのだもの。

フランスで電話で話している女性が口を手で押さえている。

形容詞「ennuyé(e)」

形容詞の「ennuyé(e)」は「困った・心配している」という意味です。

J’étais assez ennuyée.

私は心配しました。

花子さんは女性なので「ennuyé」に「e」を付けた「ennuyée」を使っています。

映画館の上映室から出る時のマリーさんの機嫌が悪そうだったので、花子さんが心配した、という状態ですね。

ただ純粋に心配した、というより、機嫌の悪い状態のマリーさんに当惑した、というニュアンスが感じられます。

ほかの例文も確認しましょう。

Puisque tu es arrivé en retard, je suis très ennuyé.

あなたが遅刻してきたから、私はとても困ったことになっている。

相手が遅刻したせいで自分が迷惑を被るということがありますよね。そんな時に感じる不満な気持ちを「ennuyé(e)」を使って伝えています。

動詞「ennuyer」

動詞「ennuyer」は「困らせる・心配させる・イライラさせる・退屈させる」という意味です。

un couple assis à côté de moi, m’ennuyait beaucoup.

横に座っていたカップルが、すごく私をイライラさせた。

少し長いですが、主語は「un couple assis à côté de moi 横に座っていたカップル」です。彼らが「me(m’) 私を」イライラさせた、という文です。

Désolée de t’ennuyer.

(あなたを)心配させてごめんなさい。

こちらに主語をつけると「Je suis désolée ~」となるので、心配をかけた人は「Je 私」、心配をかけられた相手は「te(t’) あなた」となります。

代名動詞「s’ennuyer」

代名動詞の「s’ennuyer」は「退屈する・(同じことの繰り返しなどで)うんざりする」という意味です。

je m’ennuyais tellement que j’ai failli m’endormir.

退屈しすぎて、寝そうになった。

顔に雨粒がついたフランスで窓の外を眺める女性。

日本風「アンニュイ」のフランス語表現

日本語風の「アンニュイ」のイメージは、きっと「物憂げな」「哀愁を帯びた」といったところでしょうか。

ここからは、日本で使われている「アンニュイ」を使った表現のフランス語表現を見ていきましょう。

アンニュイな気分

日本語の「アンニュイな気分」とは、なんとなくモヤモヤしていたり、ゆううつ、気怠い気分を指しますよね。

それに近い気分を指すフランス語は「ennuyeux」でなく「mélancolique」。意味は「ゆううつ・侘しい」、もしくは「鬱病の」です。決して良い意味ではありませんね。

Je suis mélancolique.

私はゆううつな気分だ。/ 私は鬱病である。

Je n’ai pas le moral.

やる気がない。

moral」は「気力」、「de ne pas avoir le moral」で「やる気がない、やる気が出ない」という意味になります。

宿題や仕事をしたくない、など嫌なことをしたくない場合ではなく、「落ち込んでいてやる気が出ない」という精神的な問題があるときに使う表現です。

Je suis triste.

私は悲しい。

辛いことがあって悲しい気持ちなら「triste 悲しい」が使えます。

Je ne vais pas bien.

調子が良くない。

je vais bien 元気です」の否定形ですが、身体だけでなく、気分が優れないときにも使える表現です。

アンニュイな雰囲気

日本語の「アンニュイな雰囲気」とはミステリアスだったり、落ち着いた大人な雰囲気のイメージでしょうか。

そんな雰囲気を表すフランス語は…

Il est mysterieux.

彼はミステリアスだ。

「ミステリアス」はフランス語で「mystérieux(se)」。「不思議な、謎めかした」という意味です。

日本語の「ミステリアス」は少し陰のあり、つかみどころがない魅力を持つ人に対して使われますが、フランス語の「mystérieux(se)」も同様に誉め言葉として使うことができます。

Il est quelqu’un de silencieux.

彼は無口な人だ。

silencieux(se)」は「無口な、静かな」、 「quelqu’un de silencieux」は「無口な人」という意味です。

無口な人は何を考えているかわからず、ミステリアスに見えることがありますよね。この表現でもアンニュイな雰囲気を伝えることができそうですね。

ちなみに「quelqu’un de」を付けるのを忘れて「Il est silencieux」というと、無口な人ではなく、「彼は静かだ」とその時だけ静かである、という意味になります。

Elle est sexy.

彼女はセクシーだ。

sexy」は「セクシー、色っぽい」という意味です。ミステリアスな魅力はセクシーな雰囲気を醸し出すこともありますよね。こちらも誉め言葉としてつかえる表現です。

そして大人で落ち着いた人といいたい場合は…

Il est quelqu’un de reposant / rassurant.

彼は(一緒にいて)落ち着く人だ。

reposant(e)」は「安らぎを与える」、「rassurant(e)」は「安心させる、心強い」という意味。一緒にいて安心できる人=人を癒すような雰囲気の持ち主ということですね。

「落ち着いた」や「静かな」を意味するフランス語なら「calme」や「tranquille」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。

これらは、ただ静かな状態を述べているのであり「大人」というニュアンスは感じられませんし、子供にも使う表現です。同じような意味の単語ですが、「アンニュイな雰囲気」を表すには適さない表現です。

まとめ

日本語で使われる「アンニュイ」はフランス語の「ennui」とは与えるイメージがずいぶん違います。

日本語では誉め言葉として使われることも多いため、その感覚でフランス語の「ennui」を使うと、フランス人には失礼だと思われてしまうことに。

ennui」の正しい意味やニュアンスを理解して、フランス語で会話するときには、日本でのイメージに引きずられないよう気をつけたいところですね。

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