フランスはストライキが多いというイメージがありませんか?とくに交通機関でストライキが行われると、一般市民の生活にも多大な影響が…
今回はフランスを代表する鉄道会社SNCFのストライキについて覗いてみましょう。
目次
ストライキの影響
会話
Hanako : Tu sais ? La SNCF risque encore de faire grève…
知ってる?SNCFがまたストライキをするんだって…
Marie : Oui, j’en ai entendu parler. D’ailleurs, cette fois-ci, ça risque de durer.
ええ、聞いたわ。その上、今回は長引きそうね。
Hanako : J’ai acheté mon billet de TGV pour ce week-end, pour aller voir une amie qui habite dans le sud.
私、南仏に住んでいる友人に会いに行くために、この週末のTVGの切符を買ってあるのよ。
Marie : Ah oui… Tu ne peux pas modifier la date ou annuler le billet ?
あら、そうなんだ…日にちの変更か切符の取り消しは出来ないの?
Hanako : Mon billet est non échangeable, ni remboursable.
私の切符、交換も返金もできないの。
Je regrette de l’avoir choisi au prix le moins cher.
この切符の一番安い値段を選んだのを後悔しているわ。
Marie : Je croise les doigts pour que tu puisses avoir de la chance d’éviter la grève des cheminots.
あなたが鉄道員のストライキを回避できるように祈っておくわね。
ポイント
non échangeable, ni remboursable
「échangeable」は「交換できる」、「remboursable」は「払い戻しできる」。
そこに否定の「non」や「ni」が付いて「好感も払い戻しも出来ない」という意味になります。
電車などの格安チケットでよく見かける表現です。他にも生鮮食品や下着などの売り場でも見かけることでしょう。
特に長距離電車の切符は、同じ日・同じ時間・同じ階層(一等車・二等車)でも、いくつかの値段が提示されることがあります。
ついつい一番安い切符を買いたくなりますが、それらは「non échangeable, ni remboursable」であることがほとんどです。
本当にそれで良いのかしっかり確認してから買うようにしてくださいね。
croiser les doigts
「croiser」は「交差させる」、「doigt」は「指」、直訳すると「指を交差させる」ですが、これには「願う・祈る」という意味があります。
この場合は人差し指と中指を交差させるのですが、そうするとキリスト教のシンボルの十字架のようになるところから「願う」という意味になったようです。
日本では同じ動作を、子供たちが汚いものから自分を守ろうとするとき(エンガチョやバリア)にしますが、所変われば意味が変わるのが面白いですね、
ちなみに「croiser les doigts」を手を背中に回して行なうと「人をだます」という表現になります。
フランスの鉄道にストが多い理由
SNCFは国有
フランスの鉄道の名前は「SNCF=Société National des Chemins de fer Français フランス国有鉄道」です。
- Société 会社
- National 国の
- Chemins de fer 鉄道
- Français フランスの
会社名の「National」から分かるようにSNCFは国有の鉄道です。つまり従業員は公務員というわけですね。
公務員はよほどの事がないと解雇の恐れがありませんし、ストライキによって会社が経済的被害を受けても、倒産もしません。
ストライキを安心して行える(というのもおかしな話ですが)土壌があるというわけです。
cheminotという立場
「cheminot」とは一般的に「鉄道員」全般を指しますが、SNCFで正しく「cheminot」というと、ある一定の規定のもと雇用されている人たちの事を指します。
「cheminot」の規定で守られているのは、法定よりも多い休日数であったり、格段に早い定年であったり、無料で手に入る鉄道切符であったりと様々です。
そもそもこの「cheminot」という身分に様々な特典が付いているのは、過去の鉄道員の仕事が過酷であったから。
現在も土日出勤や早朝深夜勤務などはありますが、デジタル化も進み昔のように過酷な仕事ではなくなっています。そしてSNCFは大変な赤字事業でもあります。
政府は「cheminot」の規定を変更し、少しでも赤字を減らそうとするわけですが「cheminot」達は、折角手にしている利点を手放したくありません。
そのため、政府が改定案を出すと、それに反対する「cheminot」がストライキを起こすというわけです。
影響力の行使
鉄道会社といわれて分かりやすいのは人々の移動手段としての電車ですが、鉄道は物流の要でもありますよね。
SNCFでストライキが起こると一般市民の生活にも多大な影響がでてしまいますので、当然ニュースにも取り上げられます。
当然「早く通常通りに戻ってくれ」と政府や国民は考えますから、ストライキでの労動組合側の主張が通りやすいのでしょう。
被雇用者側が声を上げられるフランス社会のあり方は羨ましくもありますが、やぱり公共機関のストライキは早く終わって欲しいものですね。